トラップ!:02
「……うわぁ、燃えてますね」
刃のトラップを抜けた先にはごうごうと炎が道をふさいでいた。 ウロボロスの特性上、炎は得意ではない。 極力炎に近寄らずに菜月は顔を引きつらせた。
「……流石に進めないな。火遊びは趣味じゃないんだ」
「別の道を探しましょう」
暫く辺りを見回しているとさび付いて中腹ほどから折れてしまった梯子があった。上にも道があるらしい。 ここで立ち往生していても仕方ないので、レオンさんと協力してヘレナさんを上へ投げる。 待ってて、とヘレナさんが駆けて行った。
暫く待っていると炎がなくなった。
先へ進むと大きな扉がある。 鍵穴がないかわりに、何かをはめる様な穴が中央に開いている。
「一族の、証を示せ?」
小さく書かれた文字を俺は読み上げて、二人に振り返った。 二人とも顔を見合わせて、首を傾げる。
「……そんなものあるわけないわ。あなた持ってる?」
「生憎シモンズ一の族とは関わりがなくてね」
とレオンさんは言った後、何かを思い出したかのようにジャケットの内ポケットに手を突っ込んだ。
「そういえば、エイダがくれた指輪が……」
「いつの間に……」
レオンさんの手のひらには割りと大きめの青い色をした指輪がある。 丁度扉にあいた穴と同じくらいの大きさだ。
菜月はレオンから指輪を受け取ると扉にはめた。 ごご、と鈍い音を立てて扉の装飾が動き始める。 どうやらエイダはレオンがここに来るのを予測していたようだ。
「素敵な贈り物だったよ、エイダ」
ぼそりとレオンさんが呟いた。 しかしそれにしても扉の開錠が遅い。
「レオン!来るわ!」
ヘレナの鋭い声に菜月は素早くガンホルダーから銃を取り出した。 どんどんと湧いて出てくるゾンビをハンドガンで撃ち倒す。
筋肉がむき出しのバケモノ――ブラッドショットが鋭い爪を煌かせて此方に飛び掛ってきた。
「とぁっ!?」
慌ててサイドステップを踏み、その攻撃を避ける。 倒れ込んだブラッドショットにレオンさんがショットガンで追い討ちをかけた。
タンッ――
目の前にいたゾンビをヘッドショットして倒し、もう少しで開く扉に向かって走る。 レオンさんが扉を開けて俺達に此方に来るように促す。
「い、われなくてもっ!!」
ブラッドショットの顔面を蹴り飛ばし、そのままの勢いを殺すことなく俺は扉の中へ飛び込んだ。
パシャンッ――
着地点で水がはねて、顔に掛かった。 頭が冴えそうなくらい冷たい水に俺は吃驚する。
「濡れるくらいどうってことないわよ」
ヘレナさんがレオンさんと背後で何か話している。 振り返ろうと思った瞬間数メートル先で何かが動いた。 とても巨大な魚の背びれのようなモノ。
「ひぃいいっ!?」
「……気をつけろ、何かいるぞ」
俺は悲鳴を上げて退いたが、レオンさんにぶつかり足が止まる。 退いても結局ここを通らなければ他に道はない。
水は腰より少し上くらいまであった。下半身が濡れて気持ち悪い。
ヘレナさんと別れ、門を開けてもらい、更に先へと進む。 クランクを回して門を開ける作業を俺がしている間、レオンさんはヘレナさんの援護。 中々いいチームプレーなんじゃないだろうか。
回転刃とか地面と天井から突き出てくる槍トラップもあったが、なんとか切り抜けれた。
ようよう次の扉に辿り着いた。 扉の両端につけられたレバーをレオンとヘレナが同時におろす。
――と、同時に開いた。
……地面が。
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