トラップ!:01
それから先に進むと、細い通路に出た。 松明が通路を照らしているが、古典的なそれはやっぱり光力は乏しく通路は薄暗い。 銃を構えて慎重に歩く。
「俺達は同じボートの上だ。否が応でも、パートナーって訳だな」
「いいわ、協力してシモンズを止めましょう」
「俺もボートの上に乗るからね」
通路の両端に置かれた棺らしきものの中を覗き込む途中で二人に振り返って言う。 ここまできたら俺だって無関係じゃない。シモンズってヤツが悪いヤツってことだって知ってしまったんだ。 それを放置するなんて俺には出来ない。
「ええ、勿論」
ところで、とヘレナさんがあたりを見回しながら口を開いた。
「ここもシモンズと関係が?」
「この上がヤツの研究所だ、そう考えるのが自然だな」
二人の言葉を聞きながら、棺の中に入っていた布を突っつく。 古びたそれはつついただけで穴が開いた。 放置されて随分と長い時間が経っているらしい。
「エイダ……あの人は信用しても大丈夫なの?」
「……難しい質問だ」
レオンさんが眉間にしわを寄せた。 どうやら、レオンさんとエイダさんの関係は深く複雑らしい。
俺的にはエイダさんが悪い人には見えなかった。 何でか俺の正体を知っているみたいだったけど。他の人には内緒にしてくれるみたいだし。
「ただのお友達ではなさそうね」
ヘレナさんの言葉にレオンさんは否定も肯定もしなかった。 レオンさんもエイダさんがただの友達じゃないと認めているようだ。
暫く棺の中を観察しながら歩いていると、がくんと足元が沈んだ。 また足元が崩れたのかと身体を堅くしたがそうではなかったらしい。
「ゲ……」
目の前を見ると先ほどまではなかったのに巨大なナイフが、 通路の両脇から飛び出し割と危険な速度でぐるぐると回転している。簡単に言うと扇風機の羽を刃物にした感じ。 自分の顔が引きつるのを菜月は感じつつ、背後にいたレオンを見た。 レオンも同じような表情を浮かべていたが、仕方ない、とでもいう風に頭を振った。
「ナツキ、行くぞ」
「いやいやいやいや!!!無理無理無理無理だってばぁあああ!??」
無理やり身体を掴まれて一緒に走らされる。 心の準備も何も整っていない俺の顔の数センチ上で大きな刃が風を切りながら通り抜けた。
――ガツンッ!
勢いよくレオンさんに頭を下げさせられ、レンガ造りの地面に後頭部が叩きつけられる。 余りの痛みに声も出なかった。
……何か俺に恨みでもあるんですか、レオンさん……。
上には刃があるため起き上がることもできずに、寝転がったまま心の中で呟く。 痛みが引いたところで菜月はのろのろと匍匐前進で刃の下から抜けた。
先に抜けたらしいレオンさんが平然とした顔でゾンビを撃ち殺しているのには文句の一つでも言いたかったが、トラップを起動させたのは自分なので仕方なしに何も言わなかった。
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