君の存在意義。
あまり揺れの少ない船の一室。
暗い顔をした彼らを私はベッドに座り込みながら見つめる。
二段ベッドの上にはアニスが腰掛けている。
「……その方がいいのかもな」
処刑されるでしょうね。と言うジェイドに、ルークは陰りのある表情でぽつりと漏らす。
静かな船内ではルークの小さな言葉も大きく聞こえた。
ルーク。咎めるようにティアが彼の名を呼んだ。
窓の外を見つめていたルークが仲間のいるテーブルの傍に歩み寄るとだって、そうだろと口を開く。
「俺が生まれたから、この世界は繁栄の預言から外れたんだ」
だから預言にないセフィロトの暴走も起きた。そういうルークに私は心の中で否定する。
違うよ、違う。何でそんな事言うの。
ルークが生まれなかったら、預言どおりにオールドラントはいずれ滅亡する。
「ユリアの預言には俺が存在しないって――」
「馬鹿!」
後ろ向きな発言ばかりをするルークにティアが泣きそうな顔で怒鳴った。
「私はただ、貴方がユリアの預言に支配されていないなら、預言とは違う未来も作れるって言いたかっただけよ!」
「……ティア……」
「貴方、変わるんじゃなかったの!?そんな風にすぐ拗ねて!もう勝手にしたらいいわ!」
それだけ言うとティアは椅子に座り、俯いてしまった。
そんな彼女にルークはただ弱弱しい声でごめんを繰り返した。
それ以降、その船内に会話が聞こえる事はなかった。
ただただ私は彼らを見つめるしか出来なかった。
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