*二人がくっつく前設定*













確かに、予定の時間から大分待たせたのは悪かった。そこは俺の落ち度だよ、ああ。だからってよ、


「らぁから、なんでこーなるんらっつーの!」


そりゃこっちの台詞だっつーの。


午後、暇になったらブルーレイのプレイヤーを持って来いと声を掛けておいたのは、俺の方。あいつが自分は絶対怖がりなんかじゃないとか言うから、ツ〇ヤで借りてきた話題のホラー映画を観ようって話になっていた。先に叫んだら罰ゲームってルールの耐久レース。

まあ、俺は余裕だけど?積極的に借りる事のないジャンルではあるけどな?

それで、いざ待ち合わせの時間直前、ミュージックの神様は気まぐれに降臨された訳だ。どうしても今作曲作業をしないと忘れちまいそうだったから、プレイヤーを持ってやってきたあいつに仕事だから待っててくれって頼んだ。そしたら意外と理解があったんだよな…ワーカホリックの習性かなんかだろう。そっからざっと…一、二時間位か?


「大体なぁ、なんれ俺様が天体ごときを待ってやらなきゃならねぇんだ?あぁん?」


あぁん…って、どんだけ面倒くせぇ酔っ払い方してんだよ。つか、なんで酔ってんだよ、真っ昼間から!!

イイ感じに曲を作れていたもんだから、話し掛けられても適当に合わせておいたのが、まずかった。飲み物がどうのこうの言ってたような、それに対してOKを出した記憶がうっすら…ある、ような。

冷蔵庫に常備していたはずのカクテルやらチューハイやらの缶が、床に何本か転がっている。せっかく新製品だっていうから買ってきたのに、なーんで全部飲んじまうかな。一本くらい残しといてくれたってよぉ…


「なぁ、おい、きーてんのかよ」


なんだ!?なんでコッチ寄ってくんだよ。酒くせーよ、目ぇ据わってんよ!!


「なぁ、ほしぃ」

「なんだよ」

「ほしが欲しー…なーんちゃってな!!」


待て待て。なんだその氷点下レベルのオヤジギャグは!大丈夫かこいつ?

っていうか、

その反応の前に、何故一瞬ほわっとなったよ、俺!?大丈夫か?俺?


「でよー、だからなんれ俺は酔っちまってるんら」


酒には強いはずなのに…ねぇ。前にもあったな、パーティーかなんかしたときだったか。最初は見栄張って強いフリかなんかしてんのかと思ったけれど、どうも違うらしい。


「俺がおもうに、らな」


おーおー。ついに一人で会話しはじめやがった。俺もう帰っていいかな?いやここ俺の家だけどさ。ハハ…


「お前のせーらよ!」

「はぁ?」


ぐい、とTシャツの胸倉を掴まれる。うわぁ首まで真っ赤だな、などとぼんやり考えていた。


「おまえが、最近俺をあまやかすから、らから俺がこんなになるんらろ!」


殴られたような衝撃だ。は?誰がいつ何したって?何言ってやがるんだ?こいつ。


「…甘やかされてる自覚あったのかよ?」


…待て待て、何言ってんだ?俺。


「あった。ふたりでいる時、とくに!」

「…それが嫌だったのか?」

「嫌じゃなかったんだよ」

…今なんて?


「………寝る」


おい!待て!今のは何だ!?


「おい、リク?リクルート!?」

「……」


クソ、起きやしねぇ。しっかり寝息をたててやがる所を見ると、タヌキではなさそうだ。

待ってくれ…勘弁してくれ。俺がお前を甘やかしてるだ?会えばニノを奪い合って、ケンカして、いがみ合ってっつー間柄のはずだろうが。甘やかす?ふざけんなっつの。


「おっせーんだよ、気付くの…」


今のはリクにじゃなく、自分に向けた。

自覚があったのは、俺の方だ。最近ずっと、頭ん中と言動になんかズレがあるんだよなと思ったら、これだ。今も、というよりさっきから、心臓が馬鹿みたいに鳴っている。断じて眠ってる姿が無防備過ぎるとか、真っ赤に染まった首筋がエロいだとか、そんなことこれっぽっちも思ってない。


「で、俺はこの状態で待機…ね」


アホらし。相手は男で、俺に好意どころか嫌悪の眼差ししか向けて来ないような、恋敵だろうが。

借りてきた映画はまだ観てないけど、明日朝一で返しちまおう。起きた時、お前が何も覚えてなくても、お前が覚えてないフリしてても、何があったか俺はお前に事細かに話してやる。せいぜい羞恥に震えてやがれ。


話を聞いて叫ぶのは、絶対お前だ。


罰ゲームを何にしようかと一人よからぬ妄想をしてしまったってのは、お前に話す義理がねぇはずだよな、多分。












*何がしたいってリク酔わせて言わなそうなこと言わせたかっただけでっすさーせん\(^O^)/




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