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やはり幻術か何かか、と考え込むイタチの耳に、突如、第三者の声が響いたのは、腰に回っていたサスケの手が、不意に頬へ移動した時だった。


「兄さん!」

「え」

「良かった、間に合って…って、お前、兄さんに何しようとしてるんだよ!」

「何って…プレゼント」


子供特有の高い声に、そちらを見れば、イタチには馴染み深い、幼いサスケの姿があった。
目の前には、およそ青年と呼べる年代のサスケと、幼少のサスケが違和感なく会話しており、いよいよイタチは、術を解かなくてはと思考をフル回転させる。


「嘘だ!兄さんとあんなことやこんなことしようとしてたくせに!!」

「はあ?あんなことやこんなことって、具体的に何だよ」

「そ、それは…」

「フン、意味がわかってから出直してくるんだな」


取り敢えず、一般的な幻術を解除する印を結び、"解"と念じてみたが、場面は変わらず、二人のサスケも消えていない。
これ以外の高度なものもあるにはある。しかし、おいそれと敵の幻術に嵌まってしまうような失態をしたわけではないが故、"幻術"という答えは一旦除外した。


「ねえ、もう言っちゃったの?」

「…いや、言おうとしたらお前が現れて、まだ言えてない」


漸く落ち着いたかと、二人の方を見る。だが、目に入った光景に、再び閉口してしまう。


「(…もう一人、増えている)」


顔を向けた先には、三人のサスケがいて、何やら話し込んでいた。先の二人に加え、新たに少年らしい彼がおり、姿からして、前に木ノ葉へ行った際に再会した時のそれと一致しているように思える。


「ったく、…いつまで言い合う気だお前ら」

「オレの所為じゃない。コイツが突っ掛かってくるだけだ」

「お前みたいなやつに、兄さんは渡さないんだからな!」

「はぁ……んなことしてる場合か?まだ肝心な部分が言えてないだろーが」


呆れ気味にため息を吐く少年サスケの言葉に、二人とも本来の目的を思い出したようで。様子を伺っていたイタチへと向き直る。
何をするのかと少し身構えてしまったが、戦いに来たわけではない、という言葉を信じてすぐに解いた。
三人のサスケは、イタチを囲むようにして手を回すと、三者三様の表情で言ったのだ。





「「「イタチ(兄さん)、誕生日おめでとう」」」


もはや、叶わぬ夢だと思っていた。愛する弟が、己の生まれた日を祝福してくれること。
たとえ幻の中だとしても、それは記憶として留めておける。どんなに高価な品よりも価値のある、幸せの贈り物をもらったイタチの顔は、とても───穏やかなものだった。


「ありがとう………サスケ」


これは、弟との決戦を前に、運命が見せた気まぐれか、あるいは単なるまやかしだったのか。
その答えを知ることは出来ないかもしれない。それでももし、知る機会があったなら───


「…その言葉だけで、充分だよ」


今度は、自分がサスケを祝いに行こう。この手に溢れんばかりの愛と、一握りの謝罪を持って。






Happy Birthday
イタチ兄さん!!

6.9(6.17)



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