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 副長と世界終焉について



穏やかな春の陽気がきらきらと降り注ぐ窓辺から外を眺めていて、思う。
この広い世界において、私たち人間はひどくちっぽけな存在である筈なのに、時としてその世界を動かすほどの強い力を発揮するのは何故なのだろうか…と。


「そう考えると不思議だよねえ」

「あ?何が」

「んー…や、人間ってすごいなって話」

「は……またお前は突拍子もねーことを」


確かに。でも私はこういう人だからね。気になりだすと、とことん突き詰めたくなる性分なんです。
疑問が生み出すあの何とも言えないモヤモヤ感は、早急に消し去ってしまいたいものだと思わない?


「トシはさ、もし明日世界が終わってしまうとしたら何する?」

「…」

「私はね、今までお世話になった人みんなに"ありがとう"って言いたい」

「へえ…そりゃ意外だな」

「あら、それどういう意味?」

「てっきり、甘味処のメニューを食い尽くすとかそんなんだと思った」

「トシ…私のことそういう風に見てたの」


私の答えに対して、半ばからかうような口調で答えるトシは、フッと微かに微笑を浮かべながら銜えていた煙草の灰を携帯灰皿に落とす。真面目な話のつもりが、すっかり空想じみたものになってしまったような気がしなくも、ない。


「んーじゃあさ、私が当てようか?」


窓の外に向けていた顔をくるりと部屋に戻す。
鬼の副長と恐れられる彼も眠気には負けるのか、小さく欠伸を漏らしているのが見えた。


「はァ……好きにしろ」

「そうだなー。犬のエs…土方スペシャルをたらふく食べる!」

「今、犬の餌って言おうとしたかオイ。世界が終わろうが始まろうがアレはいつでも食えるから」

「…。うー、じゃ喫煙者にやさしい街作りとか?」

「時間的に無理だろうな」

「〜…」

「もう良いだろ。暇なら市中巡回にでも行ってこい」


私が思いつく範囲でトシがしそうなことを挙げてみたけど、悉(ことご)とく切り返される。嗜好に関することじゃないとすると、仕事関係なのか…それとも。


「……私と一緒にいたい、だったりして」


内緒話をするような小声で呟いたその声は、彼には聞こえていないだろうと思い、ひとつ息を吐いて「巡回行ってきまーす」と言い残し、煙草の臭いが染み付いた副長室を後にした。


「…そうかもな」




その答えは、私の耳には届かなかったけれど。






世界は今日も
(青く、美しい)



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