※会話文
――窓辺にて
「…」
「そんな風に見ていても、雨はやまないぞ?」
「兄さん…。でも、せっかく笹飾ったのに」
「こればかりは仕方ないさ。天気予報でも、今日は曇りから雨と言っていたし」
「…これじゃ、願い事も叶わないのかなあ」
「……願い、か。何を書いたんだ」
「…教えない」
「何故?」
「言ったら、…本当に叶わなくなるような気がするんだ」
「サスケー、帰ってるのー?」
「あ、母さんだ。オレ、ちょっと行ってくるね」
「………」
***
厚い雲に覆われた空から、静かに降り続く雨。天の川を挟んで、年に一度の逢瀬も叶わぬ恋人は、雲の上で悲しんでいるのだろうか。
(――できることならこの願い、オレが叶えてやりたかった)
笹に結わえられた、青い短冊に書かれた文字に、眼の奥が熱くなった。
雨はまだ、止まない。
“兄さんと父さん、母さんと過ごすこの時が、ずっと幸せでありますように”
12.7.8