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 エイプリルフールネタ



※最近のジャンプネタバレ(主に台詞)があります!未読の方はご注意。






兄さんは、嘘つきだ。
幼い頃、オレが手裏剣術の修業を幾度か頼めば、困ったような笑みを浮かべて額を小突く。そんなやり取りを何度繰り返しただろう。
また今度、と言いつつ、その約束が果たされたのは、片手で裕に数えられる程度だった。
だが、真実を知った今となっては、それが致し方なかったのだと漸く理解する。上層部がイタチに極秘任務など与えなければ、一族と里の二重スパイなどという板挟みに合わなければ…、違う未来があったのではないかと。そう思わずにはいられなかった。


「何故…アンタがここにいる!?」


だから、これは夢だと思った。消えることのない兄への思いが見せた、幻か何かだと。
だが、光を失うことの無くなった己の瞳が映すのは、紛れも無く、あの日死んだ筈のイタチの姿で。咄嗟に口をついて出たのは、やはり疑問の言葉だった。


「………これはカブトの術…今のオレは穢土転生だ」


オレを視界に捉え、表情一つ変えずに言うイタチに、沸々と、押し込めていた感情が沸き上がるのを感じた。


「生憎、今はお前に付き合っている暇はない。オレには…やらなければならないことがある」

「そんなの知るか!!オレはアンタに聞きたいことが山程ある!」

「後にしろ…と言っても聞かないか…」


どうにかしてイタチを止めようとするが、投げかけた言葉を躱(かわ)すように、その足が進む速度を落とすことはなかった。それでも、再びこうしてイタチと会話をしているというこの状況に、どこか嬉しいと感じている自分がいて。思えば、あの戦いが最後だった。未だ忘れえぬ、あの日が。


「そうやって…また逃げるのか!?」


イタチの背に向かって、叫ぶ。そうだ。アンタはいつも…肝心なことは言わずに、重荷を一人で背負い込んで。確かに、一族を失ったあの時のオレはまだ子供で、両親を殺めた兄が憎いという気持ちに呑まれてしまっていた。年月を重ねる度にそれは復讐心へと変わり、イタチを倒すために力を欲し、里を抜け、漸く復讐を遂げた先に待っていたのは、あまりにも酷な真実。これも"うちは"の因縁による宿命なのか。


「もうオレはあの時の無力なオレじゃない。アンタの幻術だって見抜ける!」

「……」

「あれからずっと考えていた…何故アンタばかりが苦しまなくてはならなかったのか。だから…今度はオレもその重荷を背負う!」

「!」


言うやいなや、ザッ!と木を蹴る音が途切れた。前方を見れば、少し離れたところで立ち止まるイタチがいた。それに合わせ、オレも跳ぶのを止める。暫し訪れる沈黙。先に口を開いたのはイタチの方だった。


「………本気で、そう思っているのか」

「ああ、…オレも抜け忍で罪人だ。この手は既に朱に染まってる…理由ならこれで充分だろ」


確かめるような問いに返答をすると、静かに此方を振り返ったイタチはフッと小さく笑う。何がおかしい、と問えば、一拍置いて事もなげに言ったのだ。


「信用できないな」

「…すぐに信じろとは言わない。それは承知の上だ」

「いや、…今日は嘘をついてもいい日だからな。ここでうっかり騙されるわけには」

「オイ……この緊迫したシーンで何故ネタに走る」

「考えてみろ…このままシリアス一直線でいけば、今日中に話が終わらないのが関の山だ…」


腕を組み、やれやれとため息を零すイタチに、昔の優しかった兄の姿が重なる。気付けば、オレは瞬身してイタチの隣に降り立つ。一瞬、反応が遅れたイタチを力の限り抱きしめた。


「嘘つきは兄さんの方だろ…いつも額を小突いて、約束破ってばかりなのは」

「……そうだな、オレはお前に嘘を吐いてばかりだ…。寂しい思いをさせてすまなかった……サスケ」




二度と会えない筈の兄との邂逅は、偶然なのか、それとも…。
これから先に待つ展開を、この時のオレは、まだ知る由もない。






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長い…!あんまりエイプリルフール関係なくなってしまった。
12.4.1



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