──タタタタタッ
──ガラッ
「おとーさーん!」
「お、わっ!っ…オイいきなり飛びつくんじゃねェよ」
襖の戸が開いた音がして数秒後、背中に感じた重みに、煙草を灰皿に押し付けつつ声をかければ。そいつは、ぱあああっという効果音が付きそうな満面の笑みで俺に向けて手を出してきた。
「おとしだまちょーだい?」
「ハァ…後でやるから待ってろ」
「えー今ほしいー」
「聞き分けのないガキにはやらねーぞ」
「う〜…おとーさんのばかあー!おかーさんに言ってやるー!」
書類仕事が残っていたため、仕方なしに返答すれば案の定、やつは今ほしいと喚き立てた。ったく、これだから子どもは扱い難い。特に、歩行が出来て会話が成立するようになった頃が厄介なのだ。目を離せばどこかに行くし、最近は何かと親に反発したがる。それでも、甘やかすと付け上がるから適度に叱り、何でも自分の思い通りにはいかないということを、その身に教え込まなければならない。
「手のかかる子ほどかわいい、か」
机上に積まれていた書類の束はあと、数枚。愛しい我が子の喜ぶ顔を思い浮かべながら、"処理済"のレターケースに今しがた書き上げた書類を重ねた。
君がくれる小さな幸せ
(おかーさーん!おとーさんお年玉くれなかったー…)
(まだお仕事中だったんでしょう?大丈夫。終わったらもらえるから、ね?)
(…はあーい)
12.1.3