好き、ってつまりどういうことなのかよく分かんない。


「…ごめん」


大好きな人ならいっぱいいる。はるかのことも、ハルキのことも、ハルトも剛くんも椿姉もみんな大好き。


「やっぱりみのりちゃんは東のことが好きなのかな」


でもそれとみんなが言う好きの違いがあたしにはよく分かんない。


「……どうなんだろうね」


付き合うとか結婚するとか、何するの?








「みのり、大丈夫?」

はるかちゃんの言葉にはっと我に返る。さっきまでくるくるペンを回しながらねちっこい長谷川ちゃんの授業を聞いていたはずなのに、いつのまにか昼休みになっていたらしい。

「昨日の放課後、何かあったの?ハルキがみのりの様子がおかしいって心配してたよ」

そういえば、今日はなんかハルキが優しいような…
あたしそんなに態度に出てたのか。

「はるかちゃんはさあ」
「うん?」
「やっぱりミノルのことが好きなの?」

はるかは一瞬目を丸くしたけど、何も言わずにお弁当箱の蓋をあけた。

「…わからないよ」

悲しいのか困ってるのかわかんないような表情のはるかを見て、あたしもこんな顔で「ごめん」なんて言ったのかと思った。





大体、あたしに好きと言った人たちは具体的にあたしのどこが好きだったんだろう。中には話したこともないような人がいたけど、それじゃ好きも何もないような気がする。

ていうか、万が一誰かを好きになったとしても付き合うって実際何をするの?話をするのも、キスするのも、しようと思えば付き合わなくても出来るじゃん。
逆に言えば好きじゃなくても付き合いたければ付き合えるらしい。「1週間でいいから」とか「ためしに」とか言ってなんとか付き合おうとしてきた人もいるけど好きじゃなくても付き合えるなら「彼氏」「彼女」の存在イギってなんだろう。

「ハルキは彼女いたよね、中学のとき」
「……なんで」
「ハルキが告白したの?」
「…いや、向こうから」
「好きだったの?というか知ってたの?」
「知らなかったけど、悪い子じゃなさそうだったし」
「好きじゃないのに付き合うのって、怖くなかったの?」
「怖い?」
「だって相手のことよく知らないわけじゃん」
「知らないから、知るために付き合うんだろーが」

ますますわかんないかも。

「知りたいから付き合うの?」
「おう」
「でも好きってことは知ってるってことでしょ?十分知ってたら付き合う必要なんてよくない?」
「十分知るってつまりどういうことだよ」
「え?」
「オレ、お前ともう10年以上こうやって一緒にいるけどお前のことなんも知らない気がする」
「………」
「みのりだってオレのこと全部知ってるわけじゃねぇだろ」
「……ううん」
「そーゆーこと」
「……もっとわかんなくなってきた」
「…えー…つまり、付き合うってのは、許可証みたいなもんだよ」
「許可証?」
「オレの領域に入っていいよ、触ってもいいよ、っていう許可証」
「でもみのり、付き合ってないけどハルキに触ってもハルキ怒んないでしょ?」
「……」
「わかんないよーーー!」
「みのりも付き合ってみたらわかる」
「…わかんないよ…」


付き合うってことが付き合ってみたらわかる?
付き合うってことがわかんなくて付き合えないのに、それじゃ本末転倒じゃん。


「…ハルキ」
「何だよまだ何かあんの?」
「みのりと付き合って」
「………」


わかんない。
真っ暗な押入れの中で闇雲に手を伸ばしてるみたい。どっから光が漏れてるのにどっちにふすまがあってどっちが壁なのかあたしにはわからない。
ねえ、そっちから開けてよ。みのりを外に出して


「ハルキ、あたしと付き合って」


頼めるのはあんたしかいない。
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