「転校生?」
「うん。2年と1年の兄妹らしいよ。みのり、仲良くやってあげなよ」
「椿姉が仲良くしてやんなよ〜」
「そいつら寮生じゃないらしいから」
「あたしだって寮生じゃないんですけど?」
「だから仲良くやってないじゃん」
「ちょっとちょっとさすがにみのりちゃん泣いちゃうって!」

頼むよ〜、と椿に抱きついたらぺいっと床に投げられた。いたい。ひどい。
にしてもだ。
転校生か〜…クラスや学年の規律が乱れることを嫌う我が弟はこのハンパな時期の転校生をどう思うんだろう?


「ああ、東さんたちのこと?」
「なに、ミノル知ってんの?」
「ていうか、姉ちゃんそんなことのためにわざわざ俺の教室まで来たの?暇だね〜」
「そーゆうのはいいからっ」
「東はるかと東ハルキ。生徒会執行部の中じゃ話題のトップだよ。何しろ、妹のはるかは転校早々執行部入りを希望してるし、兄貴の方は暴力事件起こして停学受けたりしてるからさ」
「それまじ!?」
「ちなみに俺たち、それぞれの兄弟と同じクラス。」
「まじ!!!??」

世話役頼まれちゃってさあ、と後ろ頭をかく弟を眺めながら、ふむ、と頷いた。こりゃ、面白くなるかも。

「あっそ。まー頑張って。あたし、関係ないしね」
「何それえ」
「同じクラスっつっても、たぶん交流ないよ。そんな不良なら同じ不良同士有縞あたりが仲良くすんじゃない」
「有縞…って、ああ、有縞さんのことか。姉ちゃん、あの人嫌いだったの?」
「悪いけど、大っ嫌い」
「へえ。まあいいんだけどね。お互い健闘を祈るよ」
「ハイハイ」

なあんだ。お友達増えるかと思ったのに。

「来るのはバカとお真面目お嬢さんか」

つまんないつまんないつまんない。

あたしの頭んなかは、明日来る転校生のせいで真っ青ブルーに染まってしまった。



***



「東ハルキ」
「……えーーーーっと、東くん、ほかに言うことは…」
「別に?なんか聞きたいことあんねやったら答えるけど」

女子みたいにでっかい目とくるんくるんの髪の毛、童顔。こいつが暴力事件起こしたって?へえー。人はみかけによらないねえ。


「…えっと、じゃあ、東くんは、青木さんの隣ね」
「は?」
「は?」
「え?」
「なんで?」
「え、だって東くんだから…ほら、有縞くんの後ろでしょ?女子は逢坂さんが一番で青木さんが二番。だからとなりに…」
「ふつう転校生って一番うしろになるんじゃないの?」
「前の方が、転校してすぐは都合がいいんじゃないかしら?」

ちょっと待ってよ、有縞だけで十分だっつの。なに、ここ不良の巣になるわけ、まじで。逢坂さんかっわいそ〜〜〜


「ちょっと、オレどこでもええからはよしてくれへん?」

イラだった様子でこっちにガンをつける東にいらっとした。
はあ?
そっちがよくてもこっちはよくないんだっつの!

「じゃあ、あんたいちばん後ろいってよ。今さら席いっこずつずれるとかダルすぎ。どこでもいいんでしょ?」
「ちょ、ちょっと青木さん勝手に困ります!」
「せんせ、別にええやろ。オレ後ろでもかまわん」
「あ、東くんがそういうなら…」
「ただな、」

東があたしの席に近付く。おい、有縞。こっち向くな、金パが目に痛い。

「なんであんた、ガンつけてくんの。何もしてへんのに超不愉快やねんけど」
「知らないわよ、そんなの。思い過ごしなんじゃない」
「ハイハイ、お前らな、なに初対面でケンカしてんの。みのりちゃんもカームダーウン」
「うっさい有縞!何しゃしゃってんの!」
「ちょっ、オレ超飛び火!」


「そこまで」


いよいよヒートアップしてきた教室に、ジョーの声が鋭く響いた。


「全員、頭を冷やしてください。僕には争いの理由がよくわからないけど、それは必要ですか?東くんは先生の言うとおり、学校に慣れるまで有縞くんの後ろでいいでしょう。席をずらすのに手間がいるなら、それは放課後にすませて明日からでもいいです。青木さん、それでいいですか?」

静かにうなずく。目の端で先生が安心したように息をついたのを見てもやもやが大きくなった。
なにこれ。有縞より、東より、あたしが不良みたいじゃん。






「ちょっと、みのり!」
「椿おっそい!ショッピング行くんじゃないのお?」
「ごめん、部活のミーティング入ってさ、いけなくなっちゃったんだ。悪いけど今日はパス」
「まじで!」
「わりいね、じゃ!」

て、ことで。とぼとぼと家に帰ってたわけだが。
歩いても歩いても前にあの忌まわしき東がいる!!!!
きづくなよ〜…気付くなよ〜…きづ・・・あっ。

「…あ」
「……………」
「あんた、同じクラスの怪獣女」
「誰が怪獣だ捻るぞ」
「脅し方が怖いねんけど」


あろうことか、東はあたしのとこまで戻ってきた。しかもガンつけてきやがる。何なんだよお前もうお互い無関心でいこーぜ。

「あのさあ、オレ何かしたんか?」
「はっ?」
「お前に嫌われるようなこと何かしたんか」
「しっしてへんのんちゃう」
「何関西弁移ってんねん。しかもヘタやし」


なんだこいつ。はあー、と困ったようにうつむく東をみて、あれっ。と思った。


「なんやねん、何もしてへんねんやったら、なんでそんな喧嘩うってくんの」
「そっちが先にガンつけたんじゃん」
「目つき悪いだけや」
「うそやん」
「だから関西弁」
「うそだ!!!」
「うそちゃうわしつこいなお前!!!」


こいつ、もしかして不良違うのか。うそだろ。

「あんたが暴力事件起こしたって聞いた」
「……ああ、それか」
「だから不良かと思った」
「ちゃう」
「だろうね。でもそうだと思った」

なんてばからしい会話だろう。でも東はちゃんと聞いていた。目つきが悪いとこいつは言ったけど、そうじゃなくて、あまりに真剣に人の目をみるから、ガンをつけてるみたいになってるんだと思った。こいつは誤解を受けやすい。でも悪いやつじゃない。

「あたしは不良が一番嫌いだから、あんたが隣に座るのが許せなかった」

何正直に話てんだろ。でもおかしいほどにこいつは素直にあたしの話を聞いた。


「ようわからんけど、不良やからって人嫌うん、やめた方がええ。損するで、おまえ」
「うっせ」
「ハルトのこともたいだいそれで避けてんねやろ」
「なにたいだいって」
「あれ、あの…どうせみたいなやつ」
「たいがいじゃね」
「それそれ」
「ハルトって誰だよ」
「そっからわからんかったん!?俺の話なんも理解しとやらんやん!!」
「うっせ」
「有縞だよ、俺の前の」
「ワタシアイツキライ」
「なんでカタコト?」
「明らかに不良じゃん、あいつ。金髪だぜ?」
「だぜちゃうわ。あいつええヤツやねんぞ」
「なんで転校生がそんなこと言っちゃうわけ」
「転校生にごっつ優しかった」
「お前の優しさ基準低いな!!」
「お前は最低ランク」
「なんで!!!」
「転校生に酷かった」
「お前の頭ん中転校生しかねえのかよ!!!」
「とにかくさあ、一回ハルトともちゃんと話してみろって」
「やだ」
「やだちゃうわ子供か」
「てゆうか、あんたと話してること自体これ奇跡だからね?わかってる?」
「なんでやオレ不良ちゃうし」
「暴力」
「事件はアレ、おまえ、あの、不可抗力や」
「はあ?ぶったおすぞ」
「なんでやねん。お前、兄弟おらへんの」
「弟が一匹」
「ほな、そいつがほんまもんの不良に絡まれよったらどうすんねん」
「ぶっ殺す」
「せやろ?」

東が、初めて笑った。
ははっ、美少女〜〜

「はるかチャンは幸せだね〜」
「なんではるかの名前知ってんの!?きっしょ!!!」
「うっさいお前そろそろマジで捻るぞ!!!」


「あれ、姉ちゃん」
「お兄ちゃん?」

「あっ、ミノル」
「はるか!」

「「「「なんで一緒なんだよ…」」」」






今日のまとめ:東はいいやつだった。妹ちゃんマジかわいいかわいいやばいやばいミノルの交換でもいいからまじ欲しい等価交換マジ等価交換頼むわ腕いっぽんぐらい惜しくない



「オイ青木なんやねんこの気色悪い日記」
「読むな捻るぞ!!!」







解説

あずきが幼馴染じゃなかったら。
東家は大阪から高校生になってから西山に帰って来ます。
みのりとミノルは元よりも落ち着いた性格で、東家も今より少し大人しく我が強いはず。
元々ハルキを通して仲良くなった設定だから、みのりとハルトが仲良くないのは不思議じゃないけど、青木兄弟ふたりで生きてきたみのり的にフラフラしてる自分の父親みたいなやつには苦手意識があって、ハルトを更に嫌わせてるのかも。

大阪歴が長いから、ハルキはばりばりの関西弁で、はるかもそこそこ訛ってる。ミノルは逆に標準語。
ふたりは青木家の隣にあった空き家にはるこママの仕事の関係で引っ越してきた。
四人とも仲良くなるのに時間はかからないけど、やっぱ本来の幼馴染あずき組とは違う距離があるんでは?
なんかみのりちゃんが卑屈でハルキがヘタレだよね。ミノルは嫌味っぽい真面目屋だし。はるかちゃんはどうなんでしょう。


続きはきっとないよ!





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