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放課後。
カラカラと職員室のドアを開き、栞は「失礼します」という挨拶と共に室内に入った。
「あ…、」
『おー、佐倉。呼び出し?』
「違います…、松本先生に用があって」
『松本先生?今いないけど。つーかお前、俺より職員室来る回数多いだろ』
「宮藤先生こそ…職員室にいるなんて珍しいですね」
そう言って栞が見上げた先には、社会科教師の宮藤(クドウ)が笑みを浮かべていた。
『俺にだって職員室に用ぐらいある。お前はあれだろ、不登校の成瀬のお迎え頼まれてんだろ』
「え?なんで知ってるんですか?」
『なんでって、松本先生に聞いたから。まぁその顔じゃあ、説得は無理だったって感じだな』
そう言ってニヤリと口角を上げた宮藤に、栞は思わず眉間に皺を寄せた。
容姿端麗でスーツをそつなく着こなすこの男は、女子生徒から絶大な人気を得ている。
とはいえ彼は些か傲慢な性格であり、教師にしては不真面目な所が栞はあまり好きではない。
「先生、成瀬くんの事知ってるんですか?」
『あー…まぁ、一年の時アイツのクラスの社会科担当してたし』
「……じゃあ成瀬くんが何で学校に来ないか、知ってますか?」
『…まぁ、だいたい。お前、ちょっと出ろ。職員室で立ち話は微妙』
「あ…、そうですね」
珍しく教師らしい事を言った宮藤に、栞は感心の眼差しを向ける。
当の宮藤は、単に職員室に長居したくないだけだったのだが。
職員室を出るなりスタスタと足早に歩く宮藤に、栞は小走りで着いていく。
「先生…!どこ行くの…!」
『どこって、準備室』
「あそこっ…遠いじゃないですか…!」
『立ち話じゃ煙草吸えねーだろ。嫌なら来んな』
「なっ…!」
職員室から離れた所にある社会科準備室。
堅苦しい職員室を嫌う宮藤が、常に居座る場所。
自由奔放な教師の姿に、栞は溜め息混じりに彼の後に着いて歩いた。
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