ひみつ基地


11



穏やかな笑みに見つめられ、澄はどきどきと心臓が高鳴るのを感じた。
中学生の頃は、礼と一緒にいることで気持ちが落ち着いていたはずなのに。

今はこんなにも、心が落ち着かない。

それが決して不快なものではないことに、澄は戸惑う。

「……じゃあ、また待っててもいい?」

「いいよ。でも外で待たれるのは心配だから、家の中にいてほしいけどな」

「…それは、気を付けます…」

反省した素振りでちらりと礼を見れば、見透かしたような笑顔を向けられた。
また同じことを繰り返すだろうなと思われている気がしてならない。

「澄、久しぶりにうち寄ってくか?」

「…え?いいの…?」

「ああ、澄が来たら母さんが喜ぶよ」

「おばさんは一昨日もうちに来てお母さんと騒いでたけどね」

「…酒豪だからな、あの二人」

呆れたように礼は言うと、あっという間に着いてしまった如月家の玄関ドアを開け放つ。

礼たちが小学校低学年の頃に新しく建てられた洋風の家は、澄の憧れでもあった。
田舎特有の広い敷地内には礼たちも一時的に暮らしていた平屋建ての家があり、今はそこに彼らの祖父母が暮らしている。

中学二年の夏までは毎日のように遊びに来ていたこの家も、あの日以降は一度も来ていなかった。

礼に背中を押されて玄関へと上がり、久しぶりの空気に緊張感が高まる。

「ただいま。母さん、澄連れて来たよ」

礼はリビングのドアを開いてキッチンにいる母の純子に声をかける。
くつくつと鍋が煮える音と共に、いい匂いが澄の鼻腔を刺激した。

…肉じゃがだ。

美味しそうな香りに緊張が解れると、礼の後ろからリビングを覗く。

「おかえり〜…て、今澄って言った!?」

キッチンからお玉片手にエプロン姿の純子が顔を見せると、礼の後ろに隠れた澄と目が合う。

「うそー!澄だぁー!ちょっと来るのすっごい久しぶりじゃない!」

今にも抱き着きそうな勢いで澄の方まで来ると、純子は嬉しそうに笑顔を向けた。
礼と律によく似た綺麗な顔立ちの純子は、気の強そうな美人な女性だ。

「…一昨日も顔合わせてるくせに、久しぶりに会ったみたいな反応だな」

「うちに来るのは久しぶりじゃない。アンタ達やっと仲直りしたのね」

「えへへ、ご心配おかけしました」

「もぉ〜澄が来なくなってからうちの男達は全員暗くてほんとつまんなかったんだから。お父さんまで元気なくなるし」

不満そうに息子を睨みながら純子がそう言うと、礼は嫌そうに顔を逸らした。





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