episode.3
剥き出しとなったまだ成長途中の躰は幼さが残るものの、既に女の形をしてふっくらとその存在を主張している。
正しい大人でいる必要もなくなり、猫に例えて欲を我慢するのも阿保らしくなるくらいなんの抵抗もなく、悦は自分の躰を俺に見せつけた。
「…よくまぁ、あっさり男に裸なんて見せられるな」
「見返り、違った…?」
「いや…、違わねーけど。もっと躊躇えよ。慣れてんのか?」
「慣れてない…最初から、そのつもりで来たから」
「…俺に犯されること分かってて来たのか」
「はるちゃんなら、いいの」
昔から鬱陶しいぐらいに俺の後をついて歩いて来ていた小娘が、今じゃ男に裸体を曝して「好きにしていい」などと言うようになるとは。
俺が自分で要求しておきながら、この状況が嘆かわしい。
「はるちゃんに相手してもらえるように、ちゃんと処女捨ててきたよ」
「俺なんか言ったっけ?」
「言った。前に連絡したら、処女とはしないって」
「あー…、」
少し前に悦から来たメッセージアプリで言ったような気がする。
しかし待て。何かが違う。
『はるちゃん、私とえっちしよ』というメッセージが来たから、『処女とはしない』と一言返しただけだ。
一人暮らしを始めてからも頻繁にくる悦からの連絡は、無視をするか適当に返事を返すかしていたが、あの日はあまりに唐突な内容を送り付けてきたものだから、すぐに返事を返したのだ。
「お前、どこで処女捨ててきたんだよ」
「彼氏」
「彼氏がいんのに、こんな所にいていいのか?」
「別に好きじゃないから。告白されて、処女卒業できると思って付き合っただけ」
しれっと悪びれもせずそう言う悦の姿に、俺は眉間を押さえた。頭が痛い。
「俺は、ちゃんと好きな男としろって意味で返事を返したんだが」
「あれじゃ分かんない。じゃあ最初からはるちゃんで良かったんじゃん」
悦は不満そうに唇を尖らせて、上目で俺を見つめた。
さらりと何か言っているが、聞かなかったことにする。
俺は目の前にある剥き出しの女の躰へと上から下まで見定めるような視線を送り、深い溜め息を吐き出した。
「…まぁいいや。同意の上、ってことでいいんだな?」
口角を上げてそう尋ねる俺を窺うように見ていた悦は、無表情のまま首を縦に振った。
「処女じゃないなら、優しくしねーぞ」
「…はるちゃん、優しくない」
「そうだな。泣き叫んでも、俺が喜ぶだけだから気を付けろよ」
笑いを含んだ声音でそう言うと、ベッド脇に置いてあるサイドテーブルの引き出しから未開封の箱を取り出した。
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