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「ちょっ…、ちょっと待って…!先生っ、だめだめっ…!」

浴衣の帯を外された後は、あっという間だった。
あれよあれよという間に伊達締めやら腰ひもを外されて前をはだけさせられると、最早浴衣は袖を通しているだけの状態となり、下に着ていた白のワンピースタイプのキャミソールが曝け出される。

ソファに倒れ込むぎりぎりのところで両手を使ってなんとか宮藤を制した蓮は、真っ赤な顔で眼前の相手を見つめた。

「…抵抗すんなよ、遅くなるだろ」

「だ、だってっ…、もう、これ以上は…、だめっ…!」

「なんで」

「なんでって…、」

困惑する蓮にはお構い無しに、宮藤は彼女の髪に挿さった簪を引き抜いて自身のワイシャツの胸ポケットへとしまい込むと、僅かに抵抗していた小さな躰をソファに沈めた。

「やっ…、せんせっ…」

座った体勢から横向きにソファに押し倒されたかと思うと、脚を持ち上げられ履いていた下駄がかこっと音を立てて床に落ちる。
膝を掴まれて両脚を開かれたことでずり上がったキャミソールの裾を蓮は慌てて引っ張り、下着が見えないようになんとか押さえ込んだ。

「浅見…、手、邪魔」

「やだっ…、だめなの…、今日はっ」

「なにがだめなんだよ」

「だ、からっ…、今日はっ…浴衣だから…っ」

「…意味が分からん」

「う〜…!」

「唸るな、はっきり言え」

「だからっ…!今日は可愛い下着じゃないから、見られたくないのっ…!」

羞恥で顔を赤く染めてそう訴える蓮の姿に宮藤は無表情で数秒動きを止めると、すぐさまいつものように眉を寄せた。

「…くだらん」

「あっ!」

細やかな女心をたった一言で一蹴し、キャミソールを押さえていた手を強引に引き剥がして生地を一気に胸元まで捲り上げる。
上下セットの淡いグレーのスポーツブラとショーツが露わになり、蓮はいよいよ恥ずかしさから顔を両手で覆い隠した。

「もー!見られたくなかったのにっ…!」

「別に嫌がる必要ないだろ。俺は嫌いじゃないぞ、スポブラってのは」

気付けば学校にいるとは思えない格好をさせられていることに、蓮は不貞腐れたように指の隙間から宮藤へと視線を送った。
今が文化祭の真っ最中だということを、忘れているんじゃないだろうか。

「見られんのが恥ずかしいなら、とっとと脱げばいいだろ」

そうすることが最善とばかりの口調でしれっとそう言ってのけると、胸を両手で下から押し上げるようにスポーツブラを上にずらし、控えめなふたつの膨らみを露出させた。
ぷるんと小さく揺れて乳房が剥き出しになるなり、蓮は短い悲鳴をあげてすかさず両腕を胸の前で交差する。

「ほ、ほんとにぜんぶ脱がすの…!こんな明るいところで!」

「そのつもりだが」

「あの、待って…、ちゃんと話すから…っ」

「……もう遅せーよ」

普段より心持ち低い声が蓮の鼓膜を揺らすと、胸元を隠していた両手を掴まれ左右に開かれる。
明るい部屋の中でほぼ裸に近い状態にされたことで抵抗する力を失った蓮は、自分を見下ろす鋭い視線にどきどきと心拍が上がっていくのを感じてしおらしく目を伏せた。
袖を通したままの浴衣も、胸元で捲り上げられたブラジャーも、最早本来の役目を果たせずただ身に付けているだけになった。

「で、なんなんだこれは」

「え…、なに…?」

「これも、俺への当て付けか何かか?」

宮藤の指が胸に刻まれた赤い痕を撫で、蓮は思わず「あ!」と声を上げた。
噛まれたことがあまりに衝撃的だったせいで忘れていたが、蒼井によって胸にキスマークをひとつ付けられていたのだった。
服で隠れる位置だからといって忘れていたとは、うっかりしているにも程がある。

「…こんなとこにこんなもん付けられて、アイツに一体何された?」

「これは、その…、先生への嫌がらせだって……胸、ちょっと触られたりしただけで、それ以上のことは何も…」

「…それだけされれば充分だろ」

「先生…怒ってる……?」

「俺への嫌がらせなんてくだらねー理由でお前が嫌な思いしたんなら、ムカつくだろーが」

「先生……、どうしよう……今、きゅんとした」

「…何を喜んでんだお前は」

不機嫌そうな宮藤の顔を見て、蓮は自分の口許が緩んでいることに気が付いた。
あんなにも知られたくないと思っていたのに、普段感情の起伏が少ない宮藤が心配して怒ってくれているのを見たら、嬉しくないはずがない。

「ね…、先生…」

甘い声音で囁いて宮藤の手を自分の顔へ誘導すると、そっと頬を擦り寄せた。

「せんせ、触って…?そしたらもう、ぜんぶ忘れちゃうから」



Modoru Main Susumu
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