練習も終わり、俺と神童、二人きりの部室。
先に沈黙を破ったのは神童だった。
「あのさ、霧野」
名前を呼ばれ、心臓がトクンと跳ねた。
「な、なんだ?」
「相談があるんだけど…」
俯きながら言う神童の顔は真っ赤で。
小学校からの付き合い、だからこそ分かった。
「……円堂監督のことか?」
違う、そんな答えを期待してみたけど。
「っ…!!??」
なんで分かったかとばかりに動揺する神童に心がチクリと痛んだ。
「俺は知ってたよ。お前が円堂監督のこと好きだって」
そんな俺は、お察しの通り神童が好きだったりする。
もちろん片思いだけど。
「ははっ、霧野には何でもお見通しだな。さすが俺の幼なじみ」
"幼なじみ"…か。
俺にとっては辛い4文字。
だから
「神童、円堂監督は結婚してるんだぞ?」
つい意地悪なことを言ってしまう。
「わかってる。でも、でも…好きなんだ」
とうとう泣き出してしまった神童。
「泣くなよ、神童」
あれ、視界が…。
頬を伝わる熱いもの。
…俺も、泣いてる?
「きり……の…?」
きょとんとした顔で俺を見る神童。
「ごめ…っ……神童…」
俺、ずっと前から神童のことが好きなんだ。
そう続け、そっと神童の頬に触れる。
「だからもう抑えられない」
「霧野っ、俺は…お前のことを…」
いい幼なじみだと思ってる。
神童の言葉が聞きたくなくて、俺は神童にキスした。
「なにす…」
「一回くらいいいだろ?これでもうお前のことは諦める」
そう言ったものの、心のどこかに諦められない自分もいて。
最初で最後のキス。
俺たち、また元の幼なじみに戻れるだろうか。
―――――