〜小さな2人の約束〜 全9P

薫の言った通りの横幅が広い大きな滑り台を、色んなスタイルで何度も何度も滑り降りた2人。

頭から滑ってみたり、手を繋いで滑ってみたり、滑り下りるスピードを競ってみたり………。

子供ならでは遊び方を2人で編み出しながらの、楽しい時間が過ぎていった。

その途中、すっかり気分が乗ってきた事で、ますます動きが活発になってきた吾郎が、下から一気に長い滑り台を駆け上がる事もし始める。

それには、傍で見ていた茂治からの注意が叫ばれたりもするのだった……。



その後は、先ほどの言葉通りに遊具のあちこちを使ってのトレーニングも2人で行われ、上手く出来ない薫の動きを笑った吾郎。

そんな吾郎に文句を返しながらも、薫は持ち前の負けん気と根性によってちゃんとトレーニングを続けたのだった。

その薫の姿を見ながら、吾郎からはこんな声がかけられる。




「ねえ、薫ちゃん!今日は、野球道具は持ってきちゃダメだっておとさんに言われたからボールもないけど、今度ぼくと一緒に『野球』やろうよ!いつも寿くんと2人でやってるけど、3人ならもっと楽しいしさ!」

「え……『野球』……?パパがよくテレビで観てるけど、あれってあたしにも出来るの……?」

「うん!誰にだって出来るし『野球』ってすっごく楽しいんだよ!だから一緒にやろうよ!」

「あたし、やったことないから……吾郎くん、教えてくれる……?」

「うん、もちろん!」




吾郎からの満面の笑顔での答えを聞いて、不思議なほどの安心感でいっぱいになれた薫。その顔も、吾郎と同じ満面の笑顔となった。




「じゃあ、あたしも一緒にやる……!」

「うん、約束だよ……!」

「うん、約束する!だから指切りしよ……!」




そう言って、目の前に出された薫の小さな小指に目を丸くし、少しだけ躊躇してから自分の小指を絡ませた吾郎。

ゆ〜びき〜りげ〜んまん〜♪の、元気な薫の声と一緒に揺れた2人の手が、ゆ〜びきった!の声で離れる。

大人からは見えない遊具の中での、小さな2人の約束。

その後、遊具の外から薫を呼ぶ父親の声に気づいた2人は、一緒にその声の方向へと向かうのだった……。

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