〜癒し系なアイツ?〜 全9P

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翌日………


本日の授業も終了し、薫のクラスのHRが終わると、また大きな声が廊下から響き渡った。




「お〜い!清水いるかあ〜?」




再び注目を集めたその声の主に、恥ずかしさからのジト目を送った薫。

そんな事など無論気付きもしない吾郎が、いつものようにズカズカと教室内を進んでくる。




「ほらよ!忘れずに持ってきたぜ?」




差し出された英和辞典を受け取りながら、薫には笑顔が浮かぶ。




「よし!ちゃんと持ってきたな?本田の事だから今日も忘れるかと思ってたけどさ?」




機嫌よく鞄の中へと辞典をしまう薫の様子を見ている吾郎にも、自然と笑みが浮かんでいる。

その背後から、いつの間にか傍まで来ていた沢村の声がかかった。




「よお、本田。今日も清水を迎えに来たのか?卒業間際になって、ずい分とお熱いこったな?」




その言葉には、声をかけられた吾郎ではなく薫が過激な反応を示す。




「さっ…沢村……!な、なんだよその言い方は!!」




真っ赤になってそう怒鳴った薫。その隣りに立つ、涼しい顔のままでいる吾郎からの言葉が続いた。




「今日は清水とは帰らねぇよ。家までひとっ走りして、すぐに寿とバッティングセンターに行く約束してっからな」

「はあ……?寿って……あの佐藤寿也とかよ?お前と同じ海堂に行くんだよな」

「あ、そだっ……!沢村も寿を知ってんだし、一緒に行かねぇか?久しぶりに『野球』に付き合えよ!なっ?」




言葉と同時にグイッと沢村の腕を引っ張った吾郎。そのまま真っ直ぐ廊下へと向かい始める。




「じょ、冗談だろ本田!?今の俺はサッカー少年だっての……!!」

「んだよ?俺だって少しはサッカーに付き合ってやっただろ?今度はお前が付き合えよ!こうなったら小森とかも誘って一緒に行こうぜ」

「お前は自分でサッカー部に入ったんだろが!?俺はいいから、野球少年達だけで行ってこいよっ!!」




吾郎の力にどうにか対抗している沢村は、廊下への歩みを遅くする事だけは出来ている。

そんな力比べの真っ最中である男子2人に近寄りながら、薫は沢村へと話しかけた。




「まあまあ〜こいつが言い出したら聞かないのは、沢村も知ってるだろ?確かに、昔から少しも変わらない勝手な『野球』の誘いだけどさぁ……。実は、お前もそれが嬉しいんだ……ろっと……!」




それを言い終る頃、必死に踏ん張っていた沢村の背中を両手でドンッと押した薫。

そのせいで、見事な勢いで吾郎に引っ張られ始めた沢村には、怒ったような照れたような嬉しいような困ったような……何とも言えない表情が浮かんでいた。

騒がしかった男子2人が完全に廊下へと消えてから、薫は教室内をゆっくりと見渡す。




「いよいよ、明日は卒業式だな………」




あっという間だった3年間の想い出に浸り始めていた薫へと、友人達からの帰ろうコールがかかる。

他の女子3人と歩き始めた薫……。

まだ賑やかな声でいっぱいの教室のドアを……通り抜けた………。

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