〜溶かしたいもの〜 全14P
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「そんじゃ……ごちそうさん!また学校でな」
それは、玄関先で靴を履きながらの本田からの言葉。
「うん。今日は悪かったな本田」
「気にすんなよ、そのぶん美味いもんも食わしてもらったしな」
「お前が美味しいと思ったのは、仁見さんのチョコレートだろ?あれ……ほんと美味しかったもんな」
少しばかりの皮肉……そしてもちろん、本音でもある言葉をかけたあたしを見てから、本田は既に手にしているグローブへと視線を落とす。
「あいつのも美味かったけど……お前のも美味かったぜ?どうせなら、溶かす前のやつも食ってみたかったけどな」
「え………」
「ったく……!何も、全部溶かさなくてもよかったんじゃねぇの?あれじゃ、星型にした意味が全くねぇじゃん!ほんとアホだよなぁ〜」
いつもの、人をバカにした目つきと口調での言葉……。
でも、その前に言ってくれた「食ってみたかった」の言葉のおかげで、怒る気にはならなかったあたしが笑顔で答える。
「よしっ……!じゃあ、来年はちゃんと星型のままで食べさせてやるよ。今から楽しみにしとけよな?」
人差し指を立てながらそう言ったあたしを見て、本田の顔がまた少し赤くなったような……気が………?
「おう!そん時は、まず自分が毒味したやつを食わせろよな?」
鼻の下をこすりながら答えたあいつ。
またゲンコツしてやろうと思ったあたしの動きを察知してか、あいつはあっという間にドアの外へと飛び出した。
「またな、清水!」
「あ……またな、本田……!!」
閉じられたドア……その先で、あいつが走ってゆく音を、聞こえなくなるその瞬間まで耳を澄まして聞き続けたあたしだった………。
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……………………
…………
次の年のバレンタインが来た時………あいつは三船にはいなかった………。
黙っていなくなったあいつの事を、大っ嫌い……!!と、ずっと思い続けてきたあたし……。
けど、そんなあいつの為に、あたしは次の年も星型のチョコレートを作った。
そしてその年も、牛乳と一緒に溶かしてやったんだ。
溶けてないチョコなんて、やっぱりあいつには食べさせる価値なんかない……!
そう思いながらのあたしは、あいつのいないその後のバレンタインも、ずっと1人でホットチョコレートを飲み続けてきた………。
なのに………
十分過ぎるほどの時間をかけて、嫌いになれたはずのあいつが三船に帰ってきて………
あたしは………
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