〜溶かしたいもの〜 全14P

「さすがに内出血はしてきてんな。座ってるだけでも痛ぇか?」

「え、ううん……?座ってるだけなら、別に痛くないよ」

「ちょっと、動かしてみるぞ?痛かったら言えよ」




そう言ってから、あたしの左足のかかとを持った本田が、両手を使ってそお〜っと足首を曲げ始める。

全く痛くないと言ったらウソだけど、痛いっ!と、声を上げるほどのものではなかった。

その後もひねる角度を変えたり、足の甲を押してみたりもした本田。

指を動かすようにも指示されたから、ちゃんとそれもやって見せた。




「よし、もういいぜ?骨がどうかしちまったりはしてねぇみたいだから、今は湿布でも貼っとけよ。前に教えたやつ、清水ん家でも買ってあるんだよな?」




その問いかけに頷いたあたしは、救急箱を取りにゆく。

『野球』を始めてから、それこそあちこち打ち身だらけになっていたあたしの体……。

それはもちろんドルフィンズのメンバー全員にも言える事で、そんなみんなに本田は市販でお勧めの湿布薬を教えてくれた。

練習後の帰り道……全員が泥だらけのユニフォーム姿でドラッグストアに入っていったあの日から、この湿布薬はうちの救急箱に必ず買い足される物の一つになったんだ。




「打ち身には即冷湿布だかんな?早けりゃ早いほど、内出血もひどくなんなかったりするんだぜ?」




本田は貼る部分に合わせて湿布を切ったりカットを入れてから、あたしの足にピッタリな状態で貼ってくれた。

その器用な手つきがあまりにも意外過ぎて、あたしは本田の作業にずっと釘付けになったままだった。




「ほらよ。これでとりあえずはいいんじゃねぇの?もしこのまま痛くなくなりゃ、捻挫もしてねぇよ」




あたしに向かって顔を上げた本田にそう言われ、ここでやっと言葉を返す。




「あ、ありがとう本田……。お前ってば、こういうの上手なんだな?なんかびっくりしちゃったよ〜」

「あ……?まあ、今まで散々自分の体の面倒見てきてっからな。けど、最近はそれも滅多にはないぜ?ケガすんのは鍛えたりねぇか、お前みたいにドジな証拠だかんな」




またしても、な、憎まれ口を叩きながらソファーに座った本田がお菓子をつかみ口に放り込む。

あたしの足やら湿布薬やらを触ったまんまのその手を使ってる事に驚いたあたしは、今すぐ手を洗ってくるように怒鳴りつけてやった。

しぶしぶと洗面所に向かう本田を睨みながら見送ると、その後でソファーに置いたままにしていたランドセルが目に入る。

そしてあたしは1つの事を思い出した……。

そうだ、あいつがさっきこの中に……。



自分のランドセルだというのに、変な緊張をしながら開けてみたあたし。

そこにあった、無理に押し込められたようになっているブルーの袋をそっと取り出す。




「あ〜あ……。せっかくの綺麗な袋が、グシャグシャじゃん……」




手に取った手提げ袋の中には、間違いなく仁見さんからのチョコレートが入っているはず……。

少しだけでも袋を開けてみれば、もしかしたら中の様子もわかるかもしれない。

中身はチョコレートだけ……?それとも手紙なんかも入ってるのかな……?

知りたい……でも、勝手に見ちゃいけない……そんな事を考え始めたあたしの鼓動が早まる。




「ああ、それ……!そういや、お前のランドセルに入れっ放しだったっけな」




リビングに戻ってきた本田からかかった声に、ビクッとしながらのあたしが答える。




「は、はいっ、これ……!!忘れないで、ちゃんと持って帰れよなっ!」

「お、おう……」




ますます早まった鼓動を感じながら、本田の胸に思いきり押し付けるように手提げ袋を返したあたし。

その行動に、本田は少し驚いた顔でブルーの袋を受け取った。

それをこいつがどうするのかが気になって、ついついその後も見つめてしまう。

そそくさと隠すように、どこかに置いたりするのかな……?そんな予想をしていたあたしだったけれど……。

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