〜見たことのない君〜 全12P 

「それじゃあ……そろそろ僕達は帰らないといけないんだけれど、その前に、新郎新婦から君達への頼まれごとがあるんだ」

「頼まれごと?」

「何だよ、それ……?」

「今日の記念に、君達と一緒に写真を撮りたいんだそうだよ。頼まれてくれるかい?」

「え……!」 




日下部からの問いかけに、喜びの表情へと変わった薫。そして、その反面………。




「い……?」




誰がどう見ても困り顔となった吾郎……。と、その直後。




「あ、ほら、来たよ」




日下部の声が上がり、その視線の先を追った吾郎と薫に、いつの間にか自分達のすぐ側まで近付いてきていた新郎、新婦の姿が見えた。

その後、新婦が自分の真横で立ち止まった事により、薫の目は丸くなる。そして………



スッ………



新婦から、薫へと差し出された小さなブーケ。それを受け取りながら、薫の瞳は更に大きく見開いた。




「こ、これ……あ、あたしが貰ってもいいんですか……!?」




そう言った薫の言葉はわからずとも、その嬉しそうな表情を見て、花嫁はニッコリと微笑み頷いた……。




「わああぁぁ……」




大事そうにブーケを両手で持った薫。その顔には、最高に幸せそうな笑顔が浮かんでいる。




(…すっげぇ、わかりやすいヤツ………)




そう思い、自分の隣りに立つ薫の様子を見ながら苦笑していた吾郎であったが、そのせいか?周りで起きていた動きには気付かなかったようだ。

そこへ………




「さあ、みんなこっちを向いて〜!撮るよ〜!」




カメラを手にしている日下部からの声がかけられ、吾郎の顔は驚きの表情へと変わる。

慌てて周囲を確認した吾郎に、自分と薫のすぐ後ろに並んで立つ新郎新婦の姿が映った。

そう……吾郎にとってはいつの間にか、まさに4人で写真を撮る為の最高のポジションが出来上がっていたのだ。




「げっ……!?う、うそだろ……!俺は、いいってば……!」




1人、その場から離れようとした吾郎であったが、それに気付いた新郎によって首根っこをガッシリとつかまれてしまう。

そしてそんな自分のすぐ隣りで起きている騒ぎ?にも気付かず、薫はうっとりと手の中のブーケと花嫁を交互に見つめているのだった……。




「はい、チーズ……!!」




カシャッ……!




日下部によって、押されたシャッター。




そこに写ったのは、楽しそうに笑う新郎につかまえてられている吾郎……そして、花嫁と微笑み合っている薫……。


誰もレンズとは目線の合っていないこの1枚が、吾郎と薫の2人にとって、大切な宝物となる時がいつかくる………。




今まで、見たことのない君……そしてその笑顔に………。


この時は気付く事が出来無かった、初めてのときめきを感じた日なのであった………。




end


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あとがき

当初は、SSを書くつもりでした(苦笑)
リトル時代も書いてみたい思いがあり、ならSSで……と思ったのですが……
いやぁ〜長かったですね〜
こんなはずではなかったのに(笑)

実は、2人に「こいつとだけは、絶対にしないっ!!」が言わせたくて書き始めた私です。
そして、この後しばらく薫ちゃんに辛い片思い時代を味あわせる吾郎に「見とれちゃう」おしおき?も、したかったし……。

自分で書きながら、本当か〜?本当にこいつと絶対に結婚しないのか〜?と、一人つっこみをしていた私は、かなり怪しいヤツでした(笑)

それから、それから……!
吾郎には、とにかく薫ちゃんの笑顔に弱いヤツでいてほしい私なのです!
ただそれだけ……!(笑)
ここまでのご閲覧、誠にありがとうございました。

悠 真那より

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