〜見たことのない君〜 全12P 

ア〜〜ハッハッハッハッハッ………!!




突然響いた笑い声に驚き、同時にビクッと肩を上げた2人。

そして………




「「え………?」」 




と、これまた同時に疑問符付きの発声をした2人は、恐る恐る後ろへと振り返る……。

するとそこには、まさに米国人といった風貌の巨体の紳士が、自分達を見下ろしながら笑っている姿があったのだ。

その後もしばらく続いた笑い声の中、呆然として固まっている2人。

そんな2人に向けて、紳士の見た目からはとても想像が出来ない流暢(りゅうちょう)な日本語が語られ始めた。




「いやぁ〜ははは……急に笑ったりして、すまない。最初は、可愛いジャパニーズがいると思って見ていただけだったんだが、面白い話になってきたものだからずっと聞いてしまってたよ」

「い、いえ………」




紳士からの詫びも含まれた声かけに、ちゃんと返事をした薫。その横では、吾郎があからさまにムスッとした表情へと変わる。

そして、そんな2人へと紳士からの言葉が続いた。




「女の子が、花嫁に憧れるのは当たり前だよなぁ……?将来、結婚出来るか……なんて気にしてるなら、ここで結婚式を挙げてみたらどうだ?2人共、その格好ならちょうどいいしな」




その言葉に対し、揃って目を丸くした吾郎と薫。そして紳士からは、ある方向を指差しながらのウィンク付きでの言葉が続けられる。




「実は、ちょうどあそこに教会の神父が来てるんだ。今すぐ頼んでやれるぞ?」




その言葉には、ただ目を丸くしているだけではすまなくなった2人。お互いに大慌てとなり、裏返ったような声を出し始めた。




「け、け、結婚式なんて、な、なんでそんな……!しっ、しかも、どうして本田と……!?」

「そ、そうだよ……!なんで、こいつとそんな事しなきゃなんないんだよっ……!?冗談じゃないぜっ……!」




慌てふためき否定しながらも、揃って真っ赤な顔になっている2人。

その様子に、再び笑いが込み上げてきた紳士からの言葉が続く。




「今は、まだ早すぎるって事か……?じゃあ、もう少し大人になってからにすればいいさ」

「「こいつとだけは、絶対にしないっ……!!」」 




お互いを指差しながら、見事に揃ってきっぱりと言い放った吾郎と薫。

そんな自分達に驚き、お互いの顔を見つめ合った2人を見て紳士の我慢は限界を超えた。



ワッハッハッハッハッ………!



込み上げてきていたものを思い切りぶちまけたように笑い始めた紳士は、涙目となって2人から遠ざかり始める……。

その後しばらく、離れてゆく紳士の背中を見つめたままポカーンとしてしまっていた2人。

そしてお互いがようやく視線を動かした事で、偶然、目と目が合った2人は揃ってドキッとした表情へと変わった。

そのままでいる事がたまらず、薫から視線を外した吾郎がふざけた口調での声掛けをする。




「へ、変な外人だったよなぁ〜?日本語は、すっげえ上手だったけどよぉ〜」

「だ、だよねぇ〜?あんな大声で笑ったり、いきなり結婚式とか言っちゃうし……」




吾郎同様、ふざけた口調での言葉を返し始めた薫であったが、その中に含んでしまった「結婚式」の響きに再び2人の動きが止まる。と、ちょうどそこへ、別の人物からの呼び声がかかるのだった。




「吾郎くん……!」




その声へと振り向いた吾郎の瞳に、近付いてくる日下部の姿が映った。

おかげで、薫との間で妙な気まずさを感じていた吾郎に安堵の表情が浮かぶ。




「2人共、ここで座ってたんだね。遠くからだと人影で見えなかったから、探しにきちゃったよ」

「ごめん、おじさん。実はさ、ケガ人が増えちまったんだよね」

「え……?それは、どういう事だい?」




小さく手招きをした吾郎。それを見た日下部が背をかがめると、吾郎はその耳元に顔を寄せ小声での言葉を伝えた。




「わかった。じゃあ、ここで待っていてくれるかな?すぐに戻るから」




そう言って、この場から足早に離れて行った日下部。と、ここまでは、だまったまま2人の様子をうかがっていた薫であったが、日下部が向かった先が気になり吾郎へと質問をする。

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