〜見たことのない君〜 全12P
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2人ともが相当な量を食べ終えた頃……吾郎からの声がかけられる。
「ふぁ〜〜さすがに腹いっぱいだぜ〜〜!あとは、なんか飲み物でも持ってくっかな……。清水もいるか?」
「あ、うん……!オレンジジュース頼んでもいいかな?」
「おし!んじゃあ、取ってくる」
カタンッ……!
そう言って立ち上がった吾郎は、ドリンク類が置いてあるコーナーへと向かい始めた。
そして、その場に置いてあったトレイに、ドリンクを入れた2つのグラスを乗せて戻ろうとした吾郎。
目的地としてふと視線を送った先には、何かをジーッと見つめる薫の姿があった。
「…あいつ……何を見てんだ………?」
思わず出たその言葉と同時に、吾郎は薫の視線の先をたどってみる。
と、そこには………本日のパーティーの主役の1人である、純白のドレスに身をつつんだ新婦の姿があるのだった。
(…また、見てんのかよ……。あの足も、花嫁さんの後を追っかけててなったとか言ってたし、一体、何がそこまで気になるってんだ……?)
沸いた疑問に、首をかしげながら席へと戻る吾郎。薫の横へ到着するなり、手に持ったトレイを差し出した。
「ほら、持ってきたぜ?こっから取ってくれよ」
「あ……!ありがとう、本田!」
吾郎の声で振り向いた薫は、差し出されていたトレイの上から吾郎の分のグラスも手に取り、テーブルへと置く。
その後、着席した吾郎からの質問がされた。
「なあ……お前、なんで花嫁さんの事ばっか見てんだよ?」
「え……?ああ、だって……。すごく綺麗で幸せそうだなぁ〜と思ってさ?ついつい見ちゃうんだよね〜」
そう言うと、また新婦へと視線を移した薫。
その、うっとりとしたようになっている横顔に、吾郎の頭の中にはただ「?」が浮かんでしまう。
「へぇ……そりゃ、確かに綺麗な人だけどな……?もしかして……ずっと見てりゃ、お前も美人になれるとでも思ってんのか?」
「そ、そんなの思ってるわけないだろ……!それに、美人だからってずっと見てるわけじゃないよ!花嫁は女の子の憧れの存在だから、自然に目がいっちゃうんだってば……!」
「へぇ――っ!清水にも「女の子の憧れ」なんてのが、あったのかよ……!?」
「おいっ……!それ、どういう意味だよ!?」
の、言葉と共に、条件反射的に腕を振り上げた薫。
それに対し、持っていたフォークで防御態勢を取りながらの吾郎からの声が返される。
「よ、よせよっ……!お前が、そうやってすぐに手を上げようとするようなヤツだから、そう思っちまうんだろっ……!?」
「何を言ってんだよ……!いっつも手を上げたくなるような事ばっか言う、あんたが悪いんでしょっ……!?」
「あのなぁ〜女のくせに、手を上げたくなるってのがおかしいだろが……!?そんなんで、花嫁になんかなれるわけねぇだろ!」
「あ、あんたなんかに心配してもらわなくたって、あたしはいつか、ちゃんと花嫁になってみせるんだから……!」
「なれるもんなら、なってみろっての……!今みたいな男女のまんまじゃ、まず無理だろうけどな〜」
「ま、また、そういう失礼な事をぉぉ……!あんたこそ、そういうとこが直んなきゃ、絶対に結婚なんか出来ないからなっ……!?」
「へ〜んだっ……!俺は、そんなもんに憧れてねぇから、ちっとも構わねぇよ……!結局、結婚出来なくて困るのはお前だけじゃん」
「さ……最っ低………!やっぱ、一回ぶん殴るっ……!!」
「う、うわっ……!バカヤロ、清水っ……!やめ……」
先程よりも大きく振り上げられた薫からのゲンコツを防ぐ為、慌てて自分の頭をガードした吾郎。
それぞれの真剣な攻防が始まろうとしたその時、2人の背後から大きな笑い声が響いた。
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