〜告白後のサンジ〜

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食堂で起きた騒動のきっかけを作った大河本人の活躍によって、なんとか無事に私室に戻れた吾郎。

その後、溜まってしまった妙なストレスを短い練習時間内でかなり発散させた吾郎であったが、夕食と入浴を済ませ、再び私室に戻った頃に感じた大きな疲労感によってそのまま倒れ込むようにベットに横になってしまうのだった……。




「あれ……もう寝るの、吾郎くん……?」

「ちげぇよ……けど、なんか疲れちまってさ……」

「今日の吾郎くんには、色々とあったからね……」




そう言って、クスリと笑った寿也。

薫への告白と言う、吾郎にとっては相当な偉業を成し遂げた後で起きたあの訳の分からない惨事……そしてその後に行ったあの過剰な練習……。

それは、気分を晴らす為とはわかっていても、さすがに注意し止めるしかなかった位の練習内容だったのだ。



恋心に気付き、眠れない夜を過ごした昨夜から現時点までに起きた事を考えれば、さすがの吾郎もグロッキー状態になるのは良くわかる。

きっと……このまま眠ってしまうのだろうな、と思えた寿也が今夜は本でも読んで静かに過ごしていようと決め机に座ったその時……。




コンコンッ……!




と、聞こえたノック音に、寿也の声が返される。




「はい、どうぞ」

「失礼しまぁす」




ドアを開きながらのその声を聞き、今にも眠りそうになっていた瞳を大きく開いた吾郎。

そして、その直後……仰向けで寝ていた吾郎の体が勢いよく起き上がる。




「た、大河〜〜!!お前、さっきはとんでもねぇ事を言いやがって、一体どう言うつもりだったんだよっ……!?」




二段ベットの上段……その柵代わりの端をつかんで、真下にいる大河を見下ろし疲れているとは思えないほどの大声量で怒鳴った吾郎。

それに対し、ジャージのポケットに手をつっこんだままの大河が、吾郎の様子とはまるで逆の静かな声を返した。




「ああ、すみませんでした茂野先輩……まさか、あそこまでの騒ぎになるとは思わなかったんスよ……」




自分を見上げたその表情は、想い人の面影があるはにかんだ笑顔……そう見えてしまった吾郎は、まだ怒鳴り続けるつもりであったはずの次のセリフが喉元付近で止まってしまう。




「あ……や……ま、まあ……素直に謝んなら、それでいいけどよ………」

「そうスか……?ああ、良かったぁ〜先輩が優しい人で」




その言葉と一緒に、今度はにっこりと笑った大河に再び薫の笑顔が重なって見えてしまった気がした吾郎……。

そのせいで、徐々に赤くなり出した顔をフイッと背けてから大河へと言葉を返す。




「…のヤロ……そんな事、思ってもないくせによく言うぜ……!つか、いいから笑うなっ……!」

「は……?笑うなって……なんスかそれ?」




さすがに、吾郎に言われた事への意味がわからず、目を丸くした大河。自分の方を見ようとしていない二段ベット上段の吾郎を見上げ、ついそのまま様子を眺め続けてしまう。

すると……そんな大河へと、寿也からの質問がされるのだった。




「へぇ……吾郎くんに謝る為に、わざわざ来てくれたの?それとも、他に何か用事があるとか?」

「いえ、まあ……なんせこの先は、茂野先輩から姉貴に直通なわけじゃないですか……?なんで、一応のフォローに来なきゃと思ったんで……」

「って……おいおい……それって、俺はどうでもいいけど清水が恐えぇから謝りにきたって聞こえんだけどなぁ……」




未だにベッド上にいる吾郎は、この会話のおかげで再び直視する事が出来た大河をジト目で睨みつける。

その吾郎へと、上目使いでニッと笑った大河からの言葉が返された。

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