〜告白後のサンジ〜
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そして、食堂内では………
逃走出来ぬよう、壁際の椅子に座らされた吾郎の周りを3年生部員達が取り囲んでの尋問がされていた。
その結果、強制的に薫との事についての何問かの質問に答えさせられた吾郎が叫ぶ。
「だああぁ〜〜っ!!もう、いい加減にしろってんだよっ……!これ以上、話すことなんか何もねぇからなっ……!?」
「ほお〜〜ようするにやな……お前と清水さんは、今日、出来たてのホヤホヤなんやな……?」
「で……?当然、昨日までの『幼馴染』以上の関係は何もないと……」
「っ……ったりめぇだろが……!?大体、なんで、んな事をお前らに話さなきゃなんねぇんだよっ……!?」
質問開始時点から、真っ赤な顔となっている吾郎。
そして、照れ隠しの為なのか?その答えは終始怒鳴り声でされているのだった……。
そんな吾郎の様子に嘘は無いのだろうと判断し、これ以上聞ける事はないか……と、つまらなそうに思い始めた3年生部員達……。
だが、ちょうどその時……吾郎の周りにある3年生達の輪のすぐ外から、大河の声がかけられた。
「へええ〜〜?確か……俺が姉貴に聞いてた話だと、茂野先輩と姉貴は同じベットで一夜を共にした仲だったんスよねえ……?」
聞こえたその言葉に、吾郎の動きが止まる………。そして、その直後………
「「「「えええええぇ〜〜〜〜!?」」」」
寿也も含めた周囲全員の驚き声が重なり、それと共に全視線が吾郎へと集中した。
すると、次の瞬間……その場で勢いよく立ち上がった吾郎が、目の前の三宅と泉を押しのけ、その後ろにいた大河の胸元をつかみ上げる
「た、大河〜〜っ!!てんめえぇ〜〜一体、俺になんの恨みがあってそんな事を言いやがるんだっ……!?」
「さあ……?しいて言えば……えらく長い事、姉貴の片想いで溜まるストレスのはけ口にされてきたから……っスかね……?」
自分の体が持ち上がりそうなほどになっているにも関わらず、顔色1つ変えない大河。
そんな大河に言われた事で、殴りかかるのかと思えた程の勢いが止まった吾郎に、大河からの言葉が続く。
「けど、茂野先輩……今は、俺に文句言うよりも、先にあっちをなんとかした方がいいんじゃないスか?」
「…あ………?」
ニヤッと笑いながらの大河にそう言われ、目を丸くした吾郎。その背中のすぐ後ろには、3年生部員全員が寄り集まっているのだった。
「おいっ、茂野……!お前、実はそういうキャラだったのかよっ……!?『幼馴染』に手え出すとか驚きだぜっ!?」
「そや、そやっ……!!後で『彼女』にすりゃ何してもいいってもんでも、ないやろがっ……!?」
「そうだよ、吾郎くん……!!まさか君が、そんな事するなんて……!」
自分の背後から、一斉にかかった寿也の声までもが混ざった怒鳴り声に、吾郎がビクリと肩を跳ね上げる。
その後、慌てて振り返った吾郎は、誤解を解く為の言葉を発した。
「ま、待て、待てっ………!!違うんだよっ……!今のこいつの話は、俺らがガキの頃の事だっての……!!」
「ガキいぃ……?それが中学ん時とか言うんじゃないよな、おい……?」
「はっやああぁ〜〜!?中学で、経験済みかい……!?」
超勝手な展開で話を進める部員達……そのまま勝手な盛り上がりまでしだした部員達へと、吾郎の怒鳴り声が上がる。
「ちげぇ―――よっ……!!9才の時の話だぞっ!?そんなんで、何が出来るってんだよっ……!?」
「え……9才………?」
と、ここで……リトル時代の2人の渡米話を知る寿也の誤解は解かれる。
だが、しかし……変にテンションが上がり、思考回路がおかしくなっていた他の部員達の誤解は、この時点でも解かれなかったのだ。
「9才……!?9才ってなんや!?林間学校かなんかか……!?」
「な、なんでそんな所で、男女が一緒のベットなんだよっ……!!そんなの、おかしいだろっ……!?」
「ちゃんと説明しろっ!!説明を〜〜!!!」
もはや……好奇心旺盛な年頃男子達の頭に一度上りきってしまった血は、怪しげな妄想によって沸々と煮えたぎり冷める事が難しいらしい………。
その為、未だに訳のわからない質問が飛ばされる現状に、吾郎の口元が引きつる。
(こ、こいつら……まともじゃねぇぞ………)
自分へと少しずつにじり寄ってくる部員達を前にして、後ずさりをする吾郎……。
そんな吾郎の背後から、3年生部員達の異常な状態が見えている大河の声がかけられる。
「なんか……思ったより、すげぇ事になってきちゃったみたいっスねぇ……?」
「た、大河っ……!!て、てめ……誰のせいでこうなってると思ってんだよっ……!?」
冷静沈着な声で語った大河へと振り向き、それとは正反対の荒げた声を上げた吾郎。
そんな吾郎へと、落ち着いた笑顔を浮かべた大河の答えが返される。
「良かったら、俺が収拾つけましょうか……?」
「お、お前なあぁ……そんなすました顔して、今さらな事を言ってんじゃねぇよっ……!?」
「あ……そうスか……?まあ、別に俺としてはこのままほっといてもいいんスけどね?」
「な…………」
まだ、自分へと質問と罵声をあびせ続けている部員達を気にしながら、言葉を詰まらせた吾郎……。その困りきった様子を見て、大河が吾郎の前に出る。
「ただ……後で、俺も茂野先輩と話したい事があるんスよねぇ……。このままだと、先輩がいつ解放してもらえるかわかんないんで、やっぱ、ここは俺が収めちゃってもいいスか……?」
「あ、後でって……なんだよ………」
大河からの話と聞きドキリとした吾郎の目の前で、自分が言ってしまった事への弁明とは言え、見事にその場を落ち着かせ始めた大河………。
熱くなっている者達を相手にする場合は、それに相反する冷めきった態度で臨む事が最良であるのだと、大河によって教えられた吾郎なのであった……。
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