〜告白後のサンジ〜
〜告白後のサンジ〜
それは、5月のある日の事………
「俺………清水のことが好きだ」
厚木寮を訪れていた薫へと、吾郎から伝えられたその言葉………。
これを聞き、嬉し涙を流した薫と吾郎との関係は、この瞬間より『幼馴染』から『恋人』へと変わったのだった………。
その後、三船へと帰る薫をバス亭へと送り、寮へと戻る為に走り出した吾郎であったが………ある不安を感じ、寮の入口前で一度その足を止める。
(…あいつら……もう、いないよな………?)
先程の食堂内において………3年生部員5人の前で、薫が自分の『彼女』なのだと激白してしまった吾郎……。
隠しておこうと決めていたはずが、自分を押しのけ薫を取り巻く3年生部員達の姿に、ついカッとして言い放ってしまった吾郎だったのだ……。
あれからだいぶ時間は経っている………とは言え、気にならないはずがないその事情の為に、吾郎は一応、物音を立てぬようにしながら入り口のドアを開けた。
するとそこで………
「茂野―――っ!!」
国分のその声を皮切りに、ロビーの隅で待ち受けていた3年生部員達が一斉に吾郎の周りを取り囲む。
「なっ……なんなんだよっ……!?おいっ………!!」
「まぁまぁ〜〜!ええから、こっち来いって〜〜」
「これから、ゆっくり話を聞いてやるぜ……?なあ〜茂野?」
首には三宅の腕が回され、右腕はガッシリと児玉につかまれた吾郎……。そして、その周りを国分、泉、渡嘉敷の3人が固める。
「は、話〜〜!?んなもん、なんでお前らにしなきゃなんねぇんだよっ……!は、離せよ、おいっ……!!」
当然の抵抗を示す吾郎であったが、その体は5人に押されながら食堂へと向かわされるのであった………。
「あ〜あ……つかまっちゃったな、吾郎くん………」
それは……先程、吾郎よりも先に寮へと戻った寿也の声。
自分が戻ったその時には、既に吾郎の帰りを待つ5人の姿がロビーにあった。
その5人から一斉に「邪魔すんなよ!」と、叫ばれた寿也は、その後がどうなるのかが気になり少し離れた位置からの観察を続けていたのだ。
そして今……この予想通りの結果に苦笑を浮かべながら、食堂へと連れていかれる吾郎を見送るしかない寿也なのであった………。
「まあ、ああなるのも仕方ないっスよねぇ……?あんな、衝撃発表しちゃったんスから……」
それは、寿也と全く同じ理由でその隣りに立っていた大河の声……で、あったが………
「さ〜てと……!そんじゃ、俺もあっちに加わるかなあ〜」
大河から続いたその嬉々とした言葉を聞き、自分のように吾郎を心配してここにいたわけではないのだな……と、思えた寿也。
その後、足取りも軽やかに食堂へと向かい始めた大河の姿を、しばし見送ってからの寿也がため息混じりの言葉を呟く。
「このまま……行かないわけにはいかないよねえ………」
今後の展開をあれこれと想像しながら、大河の後を追う寿也だった………。
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