〜恋人と呼べる人〜

***************





パタンッ………


監督室のドアを閉め、廊下へと出た4人……。

その後、歩き出してすぐに口を開いたのは大河であった。




「ったく、もう……勘弁して下さいよぉ……。入部早々、こんな理由で監督室に呼ばれて説教される羽目になるなんてなぁ……」




吾郎達のリトル時代の話の後、最後の締めとして再び始まった静香からの説教……。

それを思い返し、ため息混じりでそう言った大河へと吾郎の文句が返される。




「んな事を、お前が言うなよっ……!!元はと言えば、大河が清水をここに来させたからだろうがっ!?」

「そりゃ……確かに姉貴に頼み事をしたのは俺スけど……まさか、その姉貴が寮でずぶ濡れにされるとは思ってなかったスからねぇ……」

「こ、このヤロォ……全部俺のせいだってのかよ……?」

「別に……全部……とは、思ってないスけどね……」




そうは答えたものの、誰がどう見てもまるで腑に落ちないといった表情を浮かべている大河。

その大河へと、今にもつかみかかりそうになっている吾郎の様子を見て、寿也はその右腕をしっかりとつかみ体を前に進ませずにいた。

その3人の少し後ろで、苦笑いを浮かべるしかなくなっていた薫であったが、せめて自分に出来る事はと思い制止の声を上げてみる。




「まあまあ〜!確かに監督には怒られちゃったけど、届け物も出来たんだし、あたしは全然平気なんだから、もういいじゃんか」




薫からのその声に、寿也からもなだめの言葉が続いた事で、大河への険悪モードを消した吾郎……。

その後は、仲良く?食堂へと向かう4人であった………。





*****************






そして、しばらくが経ち………

薫の洋服が乾くまで、食堂で会話でもしていようと決めた4人。

当初は4人のみがいたその場所、であったのだが……数十分が経った今、吾郎と薫が座るその周りには、いつの間にか集まってきた3年野球部員によっての人だかりが出来ているのだった……。



どうやら吾郎達の事が気になり、早めに練習を終えたらしい3年生部員達……。

寮へと戻り、通りすがった食堂で4人の姿を見つけると、一斉に薫の周りの椅子に座り始めたのだ。

そしてまた始まった、各々からの薫への話しかけ……。そんな、3年生部員達の妙にデレデレな様子に、薫の向かい側に座っている吾郎は終始無言で呆れ顔を浮かべているのだった……。




「あ〜あ……なんスか、あれは……?しかも、全員3年だし………」




そう呟いたのは、吾郎と同じく呆れ顔となっている大河。

つい先程までは吾郎達の側に座っていたものの、急に集まり始めた3年部員達に追い出されるようにその席を立ったのだった。

そして、大河と同じように座っていた席を後にした寿也と一緒に、吾郎達からは少し離れた壁際から、その様子を見つめている2人なのであった。




「みんな、ここでの男ばかりの生活も3年目だからね……清水も、2年後にはああなるかもよ?」

「うっわぁ……そんなの、勘弁して下さいよ……。やっぱ入学先、間違ったかなぁ……」




苦笑した寿也からの言葉に対し、ジト目となり本気で考え始めている大河。そんな大河を見て、寿也はクスッと笑う。

と……その直後、何かを思いついた表情となった寿也が大河へと声をかけた。

[ 121/173 ]

[前ページ] [次ページ]

ページ指定は下記jumpより

[しおりを挟む]
[作品リストへ]
[トップへ]






×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -