〜恋人と呼べる人〜
「あ……あの、ところでさ……!と、寿くんって『彼女』いるの……?」
「え……?いない、けど………」
「え……じゃ、じゃあ………!前に付き合ってた人がいるとか……?」
「いや……残念ながら、それもいないけど……でも、なんでそんな事を………?」
決して、ふざけてはいないらしい薫からの質問に、少し困った表情でそう聞き返した寿也……。
そして、その薫の問いかけ内容が気に入らず、吾郎の口元はへの字に曲がる。
「え……だってさあ……寿くんってば、あたしへの気の使い方とか、扱い方なんかもすっごく上手だったじゃんか……?あれで『彼女』がいないなんて、なんか信じられないけどなぁ……」
前回のシャワーでの事故?を含め、自分と寿也との間にあったシチュエーションを思い出した事で、恥ずかしそうに俯いた薫からのその語り……。
その意味深にもとれる薫の様子に、思わず男子3人の目が丸くなった……が……その直後、吾郎の表情だけが不機嫌なものへと変わる。
「…おい……寿也………一体、清水に何をしたんだよ………?」
睨むように自分を見つめてのその吾郎の質問に、寿也は若干動揺気味での答えを返す。
「べ、別に、何もしてないよ……!僕としては、普通に対応してるつもりだったし……!」
「へええ……じゃあ、本当にあれが寿くんの地なんだ……?凄いよなぁ〜いつか、寿くんの『彼女』になれる子は幸せだね」
「てか、清水……!お前もなあぁ……そんなに寿のことばっか褒めて、どうすんだよ……!」
不機嫌顔を通り越し、怒り顔へと変わった吾郎……で、あったが……少しすると、その吾郎が何かに気付いた表情に変わる。
「あ……っと……でもよぉ………?夢島の頃から、ずっと寿に手紙くれる子がいるよなぁ……?」
「ああ、綾音ちゃんのこと……?彼女は、僕の中学の時の後輩でね、今でもたまに手紙のやりとりはしてるけど……」
「へえ〜手紙かぁ……なんか、メールより重みがあって素敵かも」
そう言ってくれた薫を見ながら、ある事に気付き驚き顔に変わった寿也……。そのまま、薫へと視線を向けたままの寿也からの声がかけられる。
「あ……そう言えば………綾音ちゃんも、聖秀だったんだ………」
「えっ……!?う、うちの学校なの……!?」
「うん。今、1年生で鈴木 綾音ちゃんて言うんだ。クラスまでは……ちょっと、わからないけど……」
「へえ、1年生なのかぁ……あ……ねえ、もし寿くんが大丈夫なら、探しに行ってもいいかな……?」
「え……ああ、全然大丈夫だよ……?清水さんが会えたら、僕が元気にしてるって伝えてくれる?」
「わぁ〜オッケ〜!会えるといいなぁ〜」
「へえ〜?で……実は、その子の事が気に入ってたりするんスか、佐藤先輩?」
突然、会話に割り込んできた大河からのその質問。興味津々である事がはっきりとわかる大河の表情に、少々引き気味になった寿也の答えが返される。
「いや……後輩のイメージが強いから……そう言うわけじゃない、けど……」
きっぱり、と……とは言えないその語り方に、大河の瞳がキラリと光った。
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