〜恋人と呼べる人〜
「それから、バカ茂野……!」
「バ……バカとは、なんだよっ……!!いくらなんでも、そこまで言われたかねぇぞっ!?」
「ああ……それもそうよねえ……?なんか、あなたが相手だと何でも言いたくなっちゃって……」
ここで、またまた、にっこりと笑った静香……。その様子に目を丸くした吾郎へと、静香からの言葉が続く。
「じゃあ……ドジ茂野!」
ガクゥッ……!
訂正?されたその呼び名に、見事なリアクションで吾郎がコケる。
「な、なんだ、そりゃ……!?さっきのと大して変わってねぇぞっ!おいっ!?」
「これ以上、変えるつもりは無いわよ!全く、何よ偉そうに……女子を頭からずぶ濡れにしたくせに……!この、エッチ……!!」
「え……エッ……チ……って、なあぁ………?俺は別に、わざとやったわけじゃねぇんだからなっ……!?」
((監督に……ここまで弄られるのも、すごい……))
もろ、そうだとわかる静香から吾郎へのからかいの言葉に、お互いに知らずして心の中の声を重ねた寿也と大河……。
そんな2人の前で、静香からの言葉は更に続けられる。
「あのねぇ……たとえわざとじゃなくても、茂野くんのドジのおかげで、彼女は総着替えしなきゃいけなくなった上に、風邪も引きそうなんだからね!しっかり謝りなさいよっ……!?」
「え………」
それを聞いた吾郎が、思わず薫の顔を見る。
「え………??」
そして、見られた薫の語尾についた?マーク……。それもそのはず、薫自身は風邪を引きそうな感じはしていないのだ……。
その為、困惑した表情となった薫の側へと歩み始めた吾郎が、その目の前に立ってから話しかける。
「おい、大丈夫かよ……風邪、引いちまいそうなのか……?」
「え……あ、あたしなら、全然大丈夫だよ……!か、監督は、あたしを心配してそう言ってくれてると思うから、本田は何も気にする事ないって……!」
「マジなのか、それ……?お前に限って、まさかとは思うが……俺に気でも使ってんじゃねぇだろうな……?」
「あたしに限って……って、どういう意味だよ……?ほんと、失礼なヤツだなぁ……」
呆れた様子で腕を組み、ジト目で吾郎を睨んだ薫。
そして……そんな薫が元気そうに見えた事で、安心した吾郎がニッと笑う。
そんな……どう見ても親密そうな2人の会話と様子を見た静香は、驚き顔へと変化した。
(ほ、本田って……茂野くんの旧姓じゃない……。なんで、清水くんのお姉さんがそんな呼び方をするの……?それに、あの親しそうな感じは………)
頭の中で、そう考えた静香……。その後、脳内で自分勝手に2人の関係を決め付けた静香は、思わずの叫び声を上げる。
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