〜恋人と呼べる人〜

**************




静香のプライベートルームへと入った2人………。

そして、まず真っ先に向かった自身のクローゼット前で、悩む静香の姿がそこにあった………。




「う〜〜ん……洋服はともかく……ランジェリーのサイズだけが問題よねぇ……特にブラが………」




前もって尋ねた薫のスリーサイズ……それを聞いた静香は、今、真剣に薫に貸す為のランジェリー選びをしているのだった。




「あの……別に、ブラはしなくてもいいですけど………」




静香への申し訳なさと恥ずかしさが入り混じり、少し困った笑顔でそう言った薫。

それには、クローゼットの中身をひっくり返しながらの静香からの声が返される。




「そんなわけにはいかないわよ……!ここに、どれだけの飢えた男どもがいると思ってんの……!」

「う、飢えた……って………」

「あっ……そうよ、そうよ……!スポーツブラならオッケーじゃな〜い!!それじゃ、これとぉ………」




一番の悩みどころであったブラが決まった途端、てきぱきと洋服を取り出し重ね始めた静香。

それを笑顔で、薫へと手渡す。




「はい!これでいいんじゃないかしら。シャワーで、よく温まりなさいね?」

「は、はい。どうもありがとうございます」




静香へと、深く頭を下げ礼を言った薫……。受け取った洋服を大事そうに抱え、シャワールーム内へと入って行くのだった……。





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その後の、シャワールーム内では……濡れた服を脱ぎながらの薫が、心の中で文句を言い始めていた……。





(ほんとに、もう……なんでこんな事になっちゃったんだろぉ……)





ぺったりと肌に付き、非常に脱ぎずらい洋服……。その一つ一つを、床を濡らしてしまわないよう、注意しながら脱ぎ続ける薫の文句がまだ続く。





(まさか、海堂(ここ)に来て……下着まで人様に借りるはめになるなんてなぁ……。しかも……あんなスケスケ姿を2人に見られちゃうなんて………)





カアアアアアアアッ………!




先ほどの状況を思い出し、真っ赤になった薫。

その恥ずかしさから思わず俯くと、自分の濡れた服と一緒に置いた寿也のユニフォームが目に入る。




「あ……いっけない……!これは、ちゃんと寿くんに返さないとだ……。そ、それにしてもなぁ……」




あの更衣室でのドタバタ状態の中で、即座に脱いだユニフォームを自分にかけてくれた寿也……。それを思い返した薫が考え始める。




(ものすごく気が付くと言うか、スマートと言うか……。とにかく、本田とは全く別のタイプかも……。しかも、あのビジュアルじゃあ……この先も、女子が大騒ぎするに決まってるよなぁ……)




吾郎の記事を見つけると、必ずそこには一緒に載っている事が多い寿也の記事……。

しかもその内容は『野球』の実力の高さを綴るだけではなく、その物腰の柔らかさやビジュアル面が重視されているものが多いのだ……。

そんな記事が増えているおかげで、ここ最近では益々女子達からの寿也への人気が高くなっているらしい……。




1人それを深く納得しながら、シャワーのコックをひねった薫……。

暖かいお湯が全身にかかり、冷え始めていた体が徐々に温まってゆくのを感じた薫はフウッと安堵の一息をつく。




(本田も、ずぶ濡れだったけど……大丈夫かな………)




自分はこうして温まれたことで、同じように冷えてしまったはずの吾郎の体を心配する薫であった………。

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