〜恋人と呼べる人〜
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プールに向かう為、歩き始めた3人がグラウンドの角を曲がる……と………
「え………」
「あ……?」
寿也と吾郎が、思わず上げたその声の理由……それは、他の3年生部員達が並んで立つ姿がそこにあったからであった。
「な、なに……みんな、どうしたの……?」
さすがに驚いた寿也の問いかけ……その横で、吾郎と薫も驚きの表情となってその場に立ち止まる。
「なに……?じゃねぇよ……!それは、こっちのセリフだっての……!」
「ほんまやで……お前らなぁ〜いくらなんでも、男子寮に女子を連れ込んじゃあかんやろ?」
「ここまで訪ねてくる位なんだから、もしかして……どっちかの彼女だったりとかするの?」
真っ先に声を上げた渡嘉敷に、ジト目の三宅の言葉が続き、さらに指をくわえるように言った国分の問いかけがそれに続いた。
そしてどうやら、その他の部員達もジィ〜と3人を見つめながら、その返答を待ちわびているようだ。
「ちょ、ちょっと……待ってよ………」
日頃、女子と絡む時間はまず皆無と言える、ここ厚木男子寮で暮らしているメンバー達……。
その為か?この状況に対し変に力が入りすぎているメンバー達の様子に、寿也は思わずの苦笑いとなってしまう。
「最近のお前らの人気はすげぇもんな……けど、いつの間に彼女まで作ったんだよ?」
「いや、だからさ……そうじゃなくて………」
児玉からもかけられた誤解を含めた質問に、苦笑のまま答えようとした寿也。
その寿也の声を遮るように、吾郎からの大きな呆れ声が返される。
「ば〜か!こいつは俺等の『彼女』なんかじゃねぇよ……!俺達3人は、リトル時代からの『幼馴染』なんだからなっ……!」
自分の隣りで腕を組み、はっきりと言い放った吾郎の言葉に薫の胸がチクッと痛む。
(そう……だよね………確かに……あたし達は『幼馴染』……で………)
薫自身も、良くわかっているはずのその言葉……。だが……それを長年の想い人から直接言われる事で、これほどのダメージに感じるのかと驚く薫であった………。
「あ、でも……僕は、清水さんの『幼馴染』のうちに入るかどうか……」
そう言いながら振り返った寿也は、吾郎の横で沈んだ表情になっている薫に気付く。
ついさっきまで、笑顔でいっぱいだったはずの薫の急な変化……今のこの状況の何がそうさせてしまったのかが、寿也の気にかかる。
「ついでに言うと、1年の清水 大河の姉貴なんだぜ?今日は、あいつに届け物があって来たんだとさ」
他の部員達の方を見ながら、自分の隣りに立つ薫を指差し、そう言った吾郎。
そして、それを聞いた途端、部員達の何人かが吾郎と薫の間に割って入る。
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