〜恋人と呼べる人〜

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その後、数分が過ぎ………

自分の目的を忘れ、ただ練習風景を眺めていた事に気付いた薫が思わず1人で声を上げた。




「そ、そうだよ、ただ練習風景に見とれてる場合じゃなかったんだった……!た、大河は、この中のどこにいるんだよ〜!?」




ようやく、本来の目的である大河を探す為にグラウンド内を見始めた薫。

真剣な目で、部員1人1人を確認し始めた薫に、突然、後方からの声がかけられた。




「お〜い、そこの人〜!覗きは、困るんスけどねえ〜?」




ギクゥッ………!!  



その言葉に驚き、体を跳ね上げた薫。

そして、すぐさま声のした方へと体を反転させ、そのままペコペコと頭を下げ始めた薫が謝りの言葉を語りだす。




「す、すみません……!!あ、あの、別に覗きとかじゃなくて、あ、あたしの弟を探してただけなんですっ……!で、でも、勝手に見たりして、ごめんなさいっ……!」




断りもなく、自分が強豪校の練習を見ていた事には間違いがない……。

その為、怒られてしまったのだと思えた事で、頭を上げる事が出来ず、声の主の顔も見ずにそう言った薫……。

その薫に、さらに声の主からの言葉がかけられる。




「へえ……大河に用があって来たのかよ?ああ、そか……!あいつの家族だから、寮(ここ)にも入れてもらえたんだよな」

「え………」




落ち着いてよく聞けば、忘れもしないこの声……。それに驚き、伏せたままでいた薫の顔が上げられた。




「ほっ……ほっ、本田〜〜!?」

「よお、清水。まさか、ここでお前と会えるとはな」




寿也と並んで立っている吾郎を、ぶんぶん振りながらの腕で指差し驚き声を上げた薫。

そんな自分の姿をニッと笑って見つめる吾郎を前にして、薫の顔が染まり出す。




(そ、そりゃあ……本田に会えるかもって、期待はして来たけどさ……。ま、まさか、こんなにいきなりとは……)




あまりに突然の吾郎との対面に、その後、思わず無言になってしまった薫……。その顔が、ますます赤く染まり始める中、寿也からの声がかけられる。




「こんにちは、清水さん。リトルの時以来だけど……覚えてくれてるかな?佐藤 寿也です」




にっこりと笑い、薫へと挨拶をした寿也。ふいに、穏やかな声で寿也からされた自己紹介のおかげで、1人動揺気味になっていた薫もどうにか答えを返し始める。




「あ……は、はいっ、お久しぶりです……!あ、あの、もちろん覚えてます……!寿くんですよね!」




と……思わず口走り、さらに顔を赤くした薫は俯いてしまう。

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