〜苦手?生意気?可愛い後輩?〜 全16P
「2人とも、お疲れ様……!さあ、吾郎くんはすぐにアイシングに行かないとだよ?」
こちらもまた爽やかな笑顔を浮かべて、2人の背中をポンッと叩いた寿也。その言葉に吾郎の声が続く。
「あ……?ああ、そうだな。んじゃな、大河……!またいつか、やろうぜ?」
片手を上げて、グラウンドからの出口に向かって歩き始めた吾郎。そして、その後に続こうとした寿也であったが、一度足を止め大河へと小さめの声をかける。
「清水くん……あそこで、羨ましそうにしてる特待生組と吾郎くんとの勝負も、今度やってみようか?」
「え……?」
「でも……それはまだ、ここだけの話にしておいてくれる?それを言っちゃうと、楽しみで落ち着かなくなる人がいるからさ?」
そう言った寿也は、遠くなってゆく吾郎の背中を指差している。それを見て、小さく笑った大河に寿也からの言葉が続いた。
「きっと……清水くんのように、こんなに早く吾郎くんのボールに反応出来る1年はいないんじゃないかな……?僕はそう思うけどね」
大河の能力の高さを認めてくれている事を示す、その言葉……。それを会話の最後とし、歩き始めようとした寿也に今度は大河からの呼び声がかかる。
「佐藤先輩……!俺に「くん」付けはよしてもらえませんかね……?どうも、性に合わないし……別に、あちらの先輩みたいに呼んでもらっても構いませんから……」
僅かに赤くなり、寿也から目を逸らした大河。その様子と言葉に、寿也が笑顔を返す。
「じゃあ……とりあえずは「清水」って呼ぶ事にするね?僕もいきなりだと照れくさいから、吾郎くんバージョンはいずれ、でね……?」
「あ、はい……あ、っと……!そう言えば茂野先輩に伝え忘れちゃいましたけど、練習相手になってもらって、ありがとうございました……!」
「それは、こちらこそだよ。でも……吾郎くんは君との『野球』を楽しんでるだけだから、お礼なんて言わなくてもいいと思うけどね……?それよりも、また「勝負」してあげた方がきっと喜ぶよ」
笑顔のままそう言ってから、吾郎の後を追っていった寿也の言葉……。それにより、大河には微笑みが浮かぶ。
(また……俺だって、また「勝負」したい……先輩との『野球』が楽しい……ものすっごく楽しい……!)
心の底からそう思ってしまった大河……。そんな自分に気付いた大河は、思わずの呟きを発してしまう。
「これが……姉貴の言ってた、おかしくなるってやつなのかね……?まいったなぁ………」
オカルトかよ……?とまで、本気で思っていた薫からの吾郎談……。それをまさに実体験した事で、1人で納得し笑ってしまう大河だった……。
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