〜苦手?生意気?可愛い後輩?〜 全16P

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翌日………

嬉々として大河へと声をかけた吾郎の一声により、半年ぶりの勝負が開始される。

前回同様、練習グラウンド内で行われたこの勝負は、当然、他の部員達の視線に囲まれる状態でのものとなった。



最初の5球は、ストレートのど真ん中のみを投げる吾郎に対し全くの空振りに終わった大河……。

で、あったのだが……その後は徐々に150キロを超える吾郎のボールを捕らえ始め、稀には内野まで打ち返せるようになる……。

それと共に、対決中の2人の表情はどんどんと楽し気なものへと変わってゆくのだった……。



勝負は終盤となり……自分の球速に慣れ始めた大河の為に、ど真ん中以外のコースも投げ始めた吾郎によって、なかなかそのボールを芯で捕らえられなくなっていた大河に、寿也からのラストコールがかかる。




「2人とも、そろそろ終わりにしないと、次で60球目になるよ……!吾郎くんは登板明けなんだから、これ以上は僕が認めないからね!」




寿也の強めの口調に(仕方なく?)2人ともが納得をするのだった……。



そして、投げられたラストボール……。

アウトコース低めのそのボールに、大河のバットが反応する。




(ちっ……くしょおおぉ……!!間に合えっ……!!)




カッ……キイィンンン………!




大河のバット先端よりで打ち返されたボール。その行方は………




パシイィッ……!




打球音の後、瞬時に伸ばされた吾郎のグローブ内へと収められたのだった……。



その瞬間……2人の2回目の勝負が終結する………。





カラァ………ン……… 




全力でのフルスィングを続けていた大河から一気に力が抜け、その手より離れたバットがホームベース上を転がった……。

その様子を、膝に両手を置き上体を曲げた姿勢で見つめながらの大河が思う。




(ちぇっ……やっぱ、この人の球はすげぇや……今の俺にはとても敵わない………。超悔しくてムカツク……のに……なんで、だ……?どうして……こんなに楽しいんだよ………)




ボフッ……!




いつの間にか近づいてきていた吾郎が、自分のグローブを大河の頭にスッポリとかぶせる。

それに驚き、地面を見つめた姿勢のまま目を丸くした大河に、吾郎の声がかけられた。




「ったく……!あんなアウトローまで、しっかり打ち返してくんじゃねぇよ……!今のは、俺の反射神経じゃなきゃ完全に抜けてたぞ……!?」




60球の勝負……ど真ん中とわかっていて振ったもの以外は、まともに打ち返す事は出来なかった自分への励ましともとれたその言葉……。

そう思えた大河だが、そうとはとても思えていない口調での言葉を返した。




「それって……冗談っスよね……?あれを捕れなきゃ、海堂のエースピッチャー失格もんスよ……?」




未だに頭上に置かれているグローブを手でどかしながら、呆れ顔を吾郎へと向けた大河。そんな大河に、ニッと笑った吾郎の声が返される。




「へっ……そっかよ……?ほんじゃ、捕っといて良かったぜ」




そう言った吾郎の顔を見て、大河にも微かな笑顔が浮かぶ。お互いに、悔しい気持ちは無くならない……だが、それと共に感じる清々しい気持ちから、笑顔になれる2人なのであった。

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