〜苦手?生意気?可愛い後輩?〜 全16P
「あっと……そうでした……!佐藤先輩、地区予選優勝おめでとうございます!」
「え……?ああ、どうもありがとう。僕らにとっては、まだまだ序盤にすぎない優勝だけどね?」
「そりゃまた、ずい分と派手な序盤っスねぇ……?あれだけの点差でコールド試合を連発出来るってのは、今年の1軍ならではの強さだって監督達も言ってましたよ」
「おい……なんで寿にだけ、その話をすんだよ……?」
不満気な表情でそう言った吾郎……。それには、一応?大河からの言葉が返される。
「あ……もちろん、茂野先輩にものつもりっスよ……?今回も無事に登板出来て、良かったっスねぇ」
横目での目線で、さらっと言った大河。それが、おまけ程度の言い方に聞こえた吾郎は、ジト目になって大河を睨む。
「なんかよぉ……寿のとずい分違う感じじゃねぇか、おい……?」
「ええ〜そうスか〜?そんなつもりはなかったんスけどねぇ……?やっぱり、茂野先輩にはうまく伝わらないのかなぁ……?」
わざとらしく腕組みをして、小首を傾げた大河……で、あったが……直後、ニコッと笑って吾郎を見つめる。
「なぁ〜んてね……?どうにも、茂野先輩にはつっかかりたくなっちゃうんスよねぇ……」
笑顔の大河から見つめられ、何故かまたそこに薫の笑顔が重なって見えた気がした吾郎……。その為、目を丸くしてしまった吾郎に、大河の言葉が続く。
「それってやっぱ……先輩のおかげで面倒な目に合ってきたからかもなぁ……」
その言葉の終わりの頃には、また吾郎から目線を逸らし嫌気顔になった大河に、目を丸くしたままの吾郎からの声が返される。
「は、はあ……?なんだよ、その面倒ってのは……??」
その言葉の意味を、当然ではあるが吾郎はまるで理解できない。
そして、そんな吾郎の疑問を誤魔化すように、大河は全く別の言葉を投げかけた。
「や……まあ、そんな事より、茂野先輩……!次の県大会が終わった後でいいんで、また俺と勝負して下さいよね?」
「あ……そうそう!そうだったよなぁ〜!あん時は不完全燃焼で終っちまって、まいったもんなぁ……。だったら、県大会後なんて言わねぇで明日やろうぜ?それでいいだろ?」
「えっ!?けど、先輩は今日も試合で投げたんスよねぇ……?さすがに明日ってのは、やめておいた方がいいっスよ」
吾郎から満面の笑顔で誘われたものの、明日の言葉にはさすがに驚き、断りの言葉を付け足した大河。
決勝戦だった今日……先発登板していると聞いていた吾郎を気遣ってのその驚きと断りに、吾郎からはご機嫌そのものの声が返される。
「んだよ……!別に、今日も大して投げてねぇから大丈夫だよ……!こんな楽しみ、後にとっておくのは嫌だしな。なっ、いいだろ大河?」
心の底からのワクワク顔になってる吾郎の様子……それを見て、苦笑いとなった寿也が大河へと言葉をかける。
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