〜苦手?生意気?可愛い後輩?〜 全16P

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急遽「ライト茂野」での公式戦出場後、吾郎が投手として初めて公式戦のマウンドに立ったのは、翌月の11月に行われた明治神宮野球大会であった。

そこで、持ち前の150キロを超えるストレートを初披露した吾郎は、本人の意思とは裏腹に、世間からますますの注目を浴びる事になってしまう。

そして、吾郎が加わった事で更なる戦力強化となった海堂は、当然の事ながら、他校とは格段の差を付けての優勝を果たす事となったのだった……。




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年が明け………

吾郎 高校3年の3月……神奈川県春季県大会地区予選が開始される。

眉村との2本柱エースピッチャーとして、2度目の公式戦での登板を果たした吾郎。

その結果、今大会でも海堂学園高校は見事優勝を果たし、次のステップとなる神奈川県大会への出場切符を手にした。



その春季県大会地区予選が終了となった4月………

大会中のリズムで忙しく生活をしていた吾郎を含む1軍の選手達は、ようやく普段の寮生活へと戻る事が出来たのだった……。



そんな中……吾郎と寿也の私室では………




「はあぁ〜〜終わったなぁ……地区予選………」




二段ベットの上段に寝転がっている吾郎が、ため息をつきながら語ったその言葉。それを聞き、椅子に座っている寿也からの声が返される。




「うん、終わったね。でも……どうしたの?ため息なんかついてるけど……もしかして、吾郎くんにとっては初めての長期公式戦だったから、疲れたとか?」

「まっさか……!試合が終わっちまったから、つまんねぇだけだよっ!」

「なるほどね……?でも、またすぐに県大会が始まるよ」

「すぐったって、まだ2週間近く先だろ……?明日からでも、始めりゃいいのによぉ〜」

「本当にもう……吾郎くんは、気が早すぎだよ……」




いつもの事ながら……と思いながら苦笑いになった寿也……。と、そこへ……



コンッコンッ……!



聞こえたノックの音に、寿也が答える。




「はい、どうぞ」




寿也の声の後で、ゆっくりとドアを開けた人物……。それは……




「失礼しま〜す……!」

「き、君は……あ、そうか……!もう、ここに入寮してたんだね……!」




部屋へと入ってきた人物の顔を見て、驚きながらも笑顔でそう言った寿也。

そのやりとりを聞き、ここでようやく起き上がった吾郎が二段ベット上段から下を覗いた。




「へ……?誰が来たんだよ?」

「ちわ〜ス……!お久しぶりっスね、茂野先輩?」

「お、お前……大河じゃんかっ……!!そっか、お前ら特待生は、最初から厚木寮(ここ)に来るんだっけな……!」




ベット上段を見上げ、吾郎へと挨拶をした大河。その姿を見て、吾郎には満面の笑顔が浮かんだ。




「そうっスよ。けど、予選中だった1軍の先輩達とは食事や風呂の時間まで別だったし……同じ寮内にいるってのに、今まで会わなかったんスよね」

「確かにそうだったけど……それなら、もっと早く部屋(ここ)に来てくれればよかったのに」

「そうも思ったんスけど……やっぱ、予選中の先輩達は忙しいだろうし、部屋(ここ)を訪ねるのは終わってからにした方がいいかと思ったんで」

「へえ〜なんだよ?お前ってば、ちゃんと後輩っぽくそんな気が使えるんじゃんか?やっぱ中坊の時と違って成長したんだなぁ〜!」




この会話中にベットから降り始め、ふざけた口調でそう語った吾郎。

そして降り立つとすぐに、大河の頭をグリグリとなでた吾郎に対し、大河は思いきりジト目になった。




「な〜に、ガキ扱いみたいな事してんスか……?悪いけど、一番嫌いなんスよねぇ……こういうの……」




そう言うと、スッと体を動かし、自分の頭の上にあった吾郎の手を避けた大河。そして、すぐに不機嫌そのものだった表情を変える。




「言っときますけど……俺を変にからかったりすると、容赦なく返り討ちにしちゃいますよ……茂野先輩……?」




ニッと笑い、吾郎を睨みつける大河。その笑顔?からの妙な気迫に、吾郎はギクッとしてしまう。




「な、なんだよっ……!俺は褒めてやったんだぞっ!?素直に喜べばいいだけだろっ!?」




その吾郎からの言葉に、大河はフイッと横を向いてから、しれ〜とした口調での言葉を返す。




「へぇ……そうだったんスか……?俺には、そうは聞こえなかったんスけどねぇ……。て、事は、この先も茂野先輩との意思疎通は難しいって事かなぁ……」

「なんだ、そりゃ……!?今のだけで、そこまで考えるのかよ……!?」




ここまでの僅かな言葉を大河と交わしただけで、吾郎の頭からは湯気が昇りかけている。

そんな目の前の2人の様子を、寿也は楽しそうに見つめているのだった……。



そして、その寿也に対し、ふいに爽やかな笑顔を向けた大河が伝え始める。

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