〜苦手?生意気?可愛い後輩?〜 全16P

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吾郎のバックホームによってツーアウトとなった後………

残りの1人をピッチャーゴロに抑えた阿久津が、この回でマウンドを降りる事となった……。



そして、8回の裏となり……海堂の攻撃は7番の吾郎の打順から始まる……。

既に、ここまでの間で2安打を放っている吾郎。

どうやら、それに警戒をした相手ベンチから、アンパイアへとピッチャー交代が告げられたのだった……。




「へえ……結構、速そうなピッチャーが、まだいるんじゃん……?」




ネクストサークルから相手ピッチャーが始めた投球練習を見て、そう呟いた吾郎……。

試合再開となるまでの時間で、この場でのストレッチや素振りを続けているのだが、その表情はどうにも笑顔となってしまっている。




「へへ……やっぱ、試合はいいねぇ〜〜最高の気分だぜ……」




何よりも好きなこの場所に立つ事を、何ヶ月も我慢してきた自分……。それを思い返している吾郎には、素振りでさえ必要以上に力が入ってしまうのだ。

打順前のただの素振り……けれど、それを楽しそうに続けている吾郎へと、ベンチから出て来た寿也が近づいてくる。




「吾郎くん、右足の調子はどう?」

「おう、寿……!全くセーブ無しで使ってっけど、今んとこなんともねぇし絶好調だぜ?」

「そう、それなら良かった。まあ……さっきの返球のスピードから考えても、間違いなく好調みたいだものね?」




自分の事のように、嬉しそうな笑顔でそう答えた寿也。その寿也の言葉が更に続けられる。




「ところで……ちょっとアドバイスにきたんだけどさ……?マウンドにいるあのピッチャーだけど、僕等のデータからすると球は速いけどコントロールがかなり悪いんだよね」

「へ……コントロールが………?」

「うん。今までの試合でも、デッドボールの数が半端なく多いんだ。ここでケガ人が出たら、うちは試合が出来なくなっちゃうからさ……とにかく頑張って避けてよね?」




そう言って、笑顔で手を振りベンチへと戻ってゆく寿也……。その背中を見送りながら、吾郎からはボソッと文句がこぼされるのであった……。




「おいおい……アドバイスって言うよか、脅しだろそりゃ……」




と、ここで……改めてマウンド上のピッチャーの投球へと目を向けてみた吾郎に、寿也が言っていた通りのノーコンへの理解がすぐに出来てしまう。

その為、僅かに青ざめる吾郎であったが、そんな自分の頭を振り、気合いを入れる為の言葉を発する。




「まあ、いっか……!気をつけてりゃ、どうにかなんだろ!」




どうやら……目的通りに気合いを入れる事が出来たらしく、顔つきも変わった吾郎がバッターボックスへと向かい始めるのだった……。

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