〜苦手?生意気?可愛い後輩?〜 全16P

******************





試合開始時刻となった今………。



改めて井沢監督から受けた指示通りに、ライトのポジションに立った吾郎……。

その他にも、センターには本来セカンド控えの国分が入り、なんとレフトには、球場中を沸かせながらの眉村が立ったのであった……。



その光景によって、海堂に異変が起きている事は一目瞭然となり、相手ベンチ内では監督以下全ての選手が大喜びをした後、相当気合いが入ったかに見えるその様子……。

そんな対戦相手の様子を見た寿也には、思わずの苦笑が浮かんでしまうのだった……。




(こんな、付け入る隙の無い外野なんて見た事がないよ……。吾郎くんの事は知らないとしても、僕が敵なら、眉村がレフトにいる時点でとても喜べないけどね……)




その殆どが、右バッターである敵チーム……。

過去のデータによって、レフトへの打球が多い事がわかっていた為、その場所に眉村が立つ事になったのだ。

今や誰もが知る、強肩とコントロールの持ち主である眉村……。

それがレフトに立った事により、進塁阻止やアウトカウントをどれだけとられてしまうのか……とは考えないのだろうか……?

ただただ浮かれているらしい敵ベンチ内を見ながらそう思い、バッターボックス付近でクスリと笑った寿也……。

ちょうどその時、外野に立つ吾郎と眉村も、お互いに目線を合わせ寿也と同じ事を思っているのだった……。



そして、開始された秋季関東地区大会決勝戦………。

先発の市原の投球は4回まで1失点の結果を出していたが、今朝の出来事を考え、体調面での大事をとったベンチは阿久津との交代をさせる。


ところが……その阿久津が相手打線につかまり始めたのだ。

自慢のナックルがなかなかストライクゾーンに入ってくれず、フォアボールでの進塁を多く許すなど、苦しい投球を続ける事となった阿久津……。

とうとう7回の表では、ソロホームランにより1失点してしまった後、さらにランナーを背にした事で、肩での息をし始めた阿久津に腹の底からの大声がかけられる。




「阿久津―――!!点差はあんだから、打たせるつもりで投げろよなぁ―――!!俺らが守ってやっからよぉ―――!!」

「…し、茂野………」




次のバッターの準備を待つ間、ランナーを気にして振り返った阿久津にかけられた吾郎の声と余裕の笑顔……。

そして更に……吾郎に続くかのように、阿久津へと手を上げたり、笑顔を送ったりと思い思いのジェスチャーをしてみせた他のメンバー達によって、阿久津は大きな励みを得る事が出来たのであった。




(さっきから、ずっとこんな感じだ……レギュラーが欠けてるのに、打線も変わらず元気だし……やっぱり、吾郎くんのいる試合は違う……!)




今までの公式戦とは明らかに違うチームの雰囲気に、ミットを構えながらの寿也の口元が上がるのだった……。

[ 94/173 ]

[前ページ] [次ページ]

ページ指定は下記jumpより

[しおりを挟む]
[作品リストへ]
[トップへ]






×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -