〜小さな2人の約束〜 全9P
「いずみの待ってる場所が大吾と離れちゃったとこだから、まずそこに戻るよ……!!」
振り返りながらの薫からの掛け声を聞きながらも、吾郎は少しでも早く前に進む事に集中していた。
そして、目的の場所に先に到着した薫から大きな声が上げられる。
「大吾っ……!!」
「だ、大吾って……そこにいんのかよ……!?」
いまだ薫の立っている所に向かいながらの吾郎の声。
その直後、到着した吾郎の目には、いずみと大吾が2人で遊んでいる姿が映った。
「…んだよ……。ちゃんと、ここにいるじゃんか………」
「よ、良かったあぁぁ〜〜もうう〜驚かさないでよ、大吾ぉ〜〜!」
ホッとした吾郎の横で、薫は4才の大吾を思いきり抱き締める。
そしていつの間にか、3人の背後へと移動したいずみからの声がかけられた。
「おとさん、見て見て〜!いずみ1人で、ここまで届くんだよ〜!」
その声で、同時に振り返った吾郎と薫。
そこには遊具の中の高い位置にある棒につかまり、ぶら下がっているいずみの姿があった。
「へぇ〜すげぇじゃんか、いずみ!そんな高さまで、ジャンプして届くようになったのか?そんじゃあ、そのままどん位ぶら下がってられっかやってみろよ?」
「うん!いいよ……!!」
「ああ〜ぼくもぶらさがる〜〜!ねえ、ママ〜〜」
大吾からの催促で、抱き締めていたその体を持ち上げ、棒へとぶら下げた薫。
しかし、いずみのすぐ横で棒をつかんだ大吾の手は、ほんの僅かな時間ですぐにそこから離れてしまった。
その為、薫に受け止められながら着地するしかなかった大吾から、途端に不満そうな声が上がる。
「なんで、お姉ちゃんだけ出来るの?ずるいよ〜〜!!」
「へへ〜あたしは『野球』やってるから、強いんだも〜ん」
今もしっかりとぶら下がったままのいずみからは、得意気な笑い声も上がり始めた………。
そんな子供達の様子を見て……何かを感じた薫………。
それをきっかけとして、自分の記憶の最奥に長い間しまわれていた事を徐々に思い出し始める………。
その事へのあまりの驚きに、薫は瞳を最大限に開いてから、ゆっくりと吾郎へと振り返った………。
「…え……うそ……。そうだよ……確か、吾郎くん……って………?」
「…は………??」
今この瞬間まで忘れていた、遠い遠い昔の約束を思い出した薫………。
そして今はまだ「吾郎くん」と呼ばれた事に驚いているだけの吾郎………。
長い間、そうであると信じていた2人の初めての出会いの日付が変われるかどうか………。
それは、吾郎の記憶力次第となりそうだ………。
end
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あとがき
年中になった娘のクラス名簿で、なんと!!本田くんと清水さんが並んでいた事で大いに浮かれた私(笑)
「本田」と「清水」呼びをする2人が大好きだけど、そんな2人が幼稚園児なら「吾郎くん」と「薫ちゃん」と呼び合うの?と、思った途端、急に書いてしまったこの作品です(笑)
ついでに?何気にチビ吾郎にも「薫」呼びさせちゃったし(苦笑)
原作では、園児の頃の吾郎は言葉使いも結構よくて……(当たり前?)
それなら薫ちゃんもじゃないか?と、思って書いた2人なので、なんだか書いていて2人じゃないようにも感じてましたが、皆様には大丈夫だったでしょうか……?(苦笑)
それにしても、実はサイト上で初書きだったおとさん……。やっぱり書いていて、切なくなってきてたまりませんでしたあぁ〜〜!
小さい吾郎との思い出は、きっと沢山あっただろうけど……あまりにも短すぎるよねぇ……(涙涙)
実はこうして、おとさんと薫ちゃんが会えていたなんて事を、自分で書きながら嬉しく思えていた私です(爆)
そして、これまたこの時点で初書きだった「茂野ファミリー」
いずみちゃんと大吾くんの両親となった2人も、やはりとっても魅力的ですね〜!
いつもながらの私勝手な作品……!ここまで読んでいただきまして、誠にありがとうございました……!
悠 真那
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