〜グレー色の空の下〜 全16P
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「よぉ〜大河!元気そうじゃんか?」
鍵を開けたと同時に、外側から勢いよく引かれたドア。開けられた先には、モニターで確認した通りの見知った顔と、聞き慣れた声を持つ人物が立っていた。
「…いきなり来たかと思えば……俺に嫌味を言いにきたんスか、茂野先輩………?」
「はぁ……?なんで嫌味なんだよ?そんなつもりはねぇぞ?」
「嫌味じゃないってんなら、俺の足のことなんかもう忘れてるってことスかね……?こんな足引きずってる状態で、元気なわけないじゃないスか?」
呆れた目つきで吾郎を見つめる大河。それを見て吾郎の方はジト目へと変わる。
「忘れてなんかねぇよ!足をケガしてようが、元気そうに見えたんだから仕方ねぇだろが!」
「へえぇ……ちゃんと覚えててくれたんスね?けど……残念ながら、元気だとは言いたくないっスよ」
「…ったくよぉ……元気がねぇってんなら、そのクソ生意気な態度も無くせっつの……!」
「…これは生まれつきなんで、無理っス」
玄関ドアが開くなり行われた、いつものカラーの2人の会話。
そして……「どうぞ」も言わずに家の中へと戻る大河に「お邪魔します」も言わない吾郎が平然とした顔で付いてゆく。
その後も、無言のままリビングに入った2人。先にソファーの前に着いた大河が後ろへ振り返った。
「…で……?今日は一体どうしたんスか?先に言っときますが、姉貴なら仕事っスよ?」
「んな事は、わかってんだよ……!今日は、お前に会いに来たんだかんな?」
「俺、に……?」
吾郎の言葉のせいで、思わず丸くなりそうになった目を、意識してそうならずにした大河。
一度は「まさか、今日の記念日の為に?」とも思ったが、すぐにその考えを変えニッと笑みを浮かべてからの言葉を続ける。
「へえぇ……?て、ことは……貴重な月曜のオフを使って、俺に誕生日プレゼントでも持ってきてくれたって訳スか?」
そう……今日は自分の21才の誕生日だ。けど、それをこの人が知っているわけがない……それなら、この偶然を使って少しでも動揺してくれれば面白い。
そんな風に考えながらの大河の言葉を聞き、吾郎は思いきり目を丸くする。
「はぁ〜?なんだよ……!お前、今日が自分の誕生日だってのをちゃんとわかってんのか?」
「え……?んじゃ……先輩は、マジにそれでここに……?」
今度は、瞳が丸くなることを押さえられなかった大河。そのおかげで、2人揃って見開いた目でお互いの顔を見合うこととなる。
しばらく続いてしまったその状況。それに終止符を打ったのは、吾郎からの声だった。
「俺は昨日、清水と電話してた時に聞いたんだけどよ……。お前ってば、よっく自分の誕生日なんて覚えてんな?んなもん、普通は忘れちまわねぇか?」
「…普通じゃないのは、どっちスかねぇ……?自分の誕生日位、普通は忘れないもんでしょうが」
「…んだよ……俺が普通じゃないってのか?」
「どこからどう見ても、先輩は普通じゃあないっスよ。気付いてないんスか?」
ピシャリと言い放った自分の言葉に対して、ギャーギャーと喚き始めた吾郎を無視し、大河はキッチンへと向かい始める。
その目的の場所となっている冷蔵庫の中には、確か吾郎が飲みそうな物も入っていたはずだ。
それを缶のまま渡すか、グラスに注いでからにするかも考えながら冷蔵庫を開けた大河に、吾郎からの声がかかった。
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