〜グレー色の空の下〜 全16P
〜グレー色の空の下〜
ここんとこ……空が晴れないよなぁ………。
それは自室の窓から、どんよりとしたグレー色の空を見上げて思ったこと。
今日は……どうにも雨になることが多すぎる自分の記念日だ。
この分じゃ、今年もか………。
もし、この後で雨が降れば7年連続となる。ここまで続けば、それはそれで自慢出来るほどのことかもしれない。
けれど、今年の自分にだけは勘弁してもらいたかった………。
見事に晴れた青空が見たい。
出来れば雲一つ無い方がいい。
その方が、飛んできた白いボールがよく見えるから………。
頭の中にはっきりと浮かんだ青空の中の白球。それを見事にキャッチするまでのイメージを作る為に、そっと瞳を閉じてみた。
イメージの中の白球は、スローモーションのようにゆっくりと飛んでくる。あと少し……空に向かって構えたグローブに収まるまでは、あとほんの少しだ………。
捕球の瞬間、グローブから左手に伝わる振動さえを明確に思い出せる自信がある。
それだけ長い時間、ずっと捕り続けてきた白球……。その捕球の瞬間が……すぐ……そこ、に………!
ピ〜〜ン〜ポ〜〜ンンン〜〜♪
頭の中での捕球直前に鳴ったドアホンの音。思わず瞳を開いてしまったせいで、イメージの中の白球は一瞬で消えた。
たとえイメージの世界のことだとしても、あのスカッとする捕球の瞬間が味わいたかった……のにっ……!!
「…一体、誰だよ……?最っ悪なタイミングだよなぁ……」
眉間にシワを寄せ、呼びかけに答える為に仕方無しに室内から廊下へと向かう。
両親揃って遠方の法事で出かけている今日、階下が留守なのは承知している。だから自分が応対するしかないのだ。
そう思いながらの歩みは、普段とは比べものにならないほど遅い。
だが、それは決して応答する気が無いからではなく、左足首を中心にがっちりと巻かれたテーピングのせいであった。
とは言え……喜んで応答する気にもなれていない不機嫌そのものの表情で、辿り着いた廊下に取り付けてあるテレビホンのモニターへと目を向ける……。と、途端にその目が大きく見開いた。
「…え……嘘、だろ………?」
モニターに映っているのは、見知った顔。けれど、この場にいることが信じがたい顔であった。
驚き顔のままでモニターのスイッチを押し、とりあえずの応対をしてから階下へと向かい始める。
階段を降りる間に、すっかり普段のものへと戻された表情。そして到着した玄関で、ドアの鍵へと手を伸ばすのだった……。
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