〜留守電へのメッセージ〜 全3P

「な、何……?今の本田の声……最後の方がよく聞こえなかったんだけど……」

「…清水……さっきのあれ…………さっさと消せよな………」

「は……?な、なんだよ、さっきのあれって……?」

「…のヤロッ……ボケたふりすんなよ……!俺がお前の留守電に入れたメッセージだよ!いいから、ここで今すぐ消せっての……!」

「え……ちょ、ちょっと待ってよ……!留守電って何……?あたしの携帯に留守電なんて残ってなかったけど……」

「へ……?う、嘘だろ……お前がまだ聞いてないだけなんじゃ……」

「そ、そんなはずないってば……!メッセージどころか、本田からの着信も履歴になかったもの」

「ど、どうしてだよ……俺は、今朝から4回もお前に電話してんだぜ……?」

「ほ、ほんとに……!?だとしたら……本田ってば、誰かの携帯に間違って電話しちゃってたんじゃないのか……?」

「だ、誰か、の……って………」

「ね、ねえ、ねえっ……!とにかく、あたしとのこの電話は一回切って、自分の携帯の発信履歴を見てみなよ!それ位はなんとか出来るだろ?」




とは言われたものの……着信履歴の画面は知ってるが、発信履歴ってなんだ?であった吾郎は、薫にきちんと操作説明を聞いてから一度電話を切るのだった……。



その後………

どうにか自分の発信履歴を確認し、自分が留守電を残した相手が誰であるかがわかった吾郎の顔が一気に青ざめる……。

あのメッセージを聞かれてしまった相手の顔が鮮明に浮かび、しばらく青い顔のまま固まってしまった吾郎……。その耳に、ある音が飛び込んできた。




ピルルルルルルル…………




このタイミングで鳴った携帯の着信音……しかも、それは薫からではなかった………。

表示された名前を見て頭を抱えた吾郎だが、出来ればこのまま切れてくれと願った音は非情にもずっと鳴り続けている。

仕方なく……着信した吾郎に聞こえてきたその声は………。




「あ……茂野先輩っスかぁ……?もしも〜し……!茂野先輩〜〜!!返事して下さいよ〜!」




聞き慣れたその声は、着信しただけで全く返答をしなかった(出来なかった?)吾郎の名を呼び続けてきた。

その為……もう、どうしようもないと感じた吾郎がようやくの声を返す。




「もし、もし………」

「先輩っ……!ちゃんと茂野先輩っスよね?俺「は」間違い電話なんかしてないっスよねぇ〜?」




もろ、自分へのイヤミを含めたその問いかけに、吾郎の口元は悔しさで引きつり始める。




「間違ってねぇよ………」

「ああ、良かった。なら、説明しますけど……茂野先輩と違って、俺は今日オフじゃないんで電話に出れなかったんスよ。留守電にメッセージまで残してもらっちゃって……悪かったスね?」




ニヤニヤと笑う大河の様子が目に映った吾郎が、がっくりと肩を落とした……。



大きな「清水」違いをしてしまった自分……。

あげくには、あんなメッセージを残してしまったという最大の過ちに、吾郎は本気で録音前の過去に戻る事はできないものかと考えたのであった……。



今になって、着信履歴の名をよく見ずに発信をしていた自分を思い返した吾郎。

薫からかかってくる事が殆どの自分の携帯だけに、履歴から薫にかけ直す事ばかりしてきた。

が……よくよく思い返せば、最後に着信したのは昨夜、久し振りにかかってきた大河からの電話だったのだ……。

そのせいで、履歴に残ったもう一つの「清水」の字……。それをチラッと見ただけで、4回も!軽はずみな発信動作をしてしまった自分を心の底から悔いた吾郎であった……。



そんな吾郎が、薫の携帯に伝えたつもりの言葉は………。




『悪りぃ……さっきは、あんな言い方しちまって……。お前に、会いたかったけどよぉ……それが無理でも、声だけは聞かせろよな……?待ってっから……さ……』




きっと……恋人同士なら当たり前のそんな言葉……。


だが……普段の自分は決して言わないそんな言葉なのだ……。




本人に、ではなく……留守電に、だからこそ言えてしまったはずのその言葉は、後日、姉想いの弟からちゃんと薫に伝わるのであった………。


大河へと「いいか、絶対に消せよっ……!?今すぐだぞ、今すぐっ……!!」を叫び続けた吾郎には、その場で消した事になっているけれど(笑)


end

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あとがき

さすがの吾郎も、ここまでのミスはしない……??とは、思えなかった私です(笑)

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