〜留守電へのメッセージ〜 全3P

「いや……なんかあったとかじゃ無いにしても……あいつが連絡してこねぇって事は、よっぽどの用事があるのかもしんねぇしな……。なのに、さっきのあれじゃ………」




一度、残してしまった留守電への乱暴な声を消す事は出来ない。

と、なると……今の自分がやれる事は、もう一度、声を残す事だけだ……。

すっかり落ち着きを取り戻した吾郎が考え付いた結果により、先程放り投げた携帯が拾い上げられるのであった……。




そして………数十分後…………。



ピルルルルルルル………



やっと鳴ったと思えた携帯を、今までには無いスピードで手に取った吾郎。

そしてすぐに着信動作をすると、電話の相手の声が聞こえてきた。




「もしもし、本田……?今って、電話してても大丈夫か……?」




いつものように、まずは自分の状況を気にしてくれる薫からの問いかけ……。そして、ようやく聞く事が出来たこの声に、吾郎は心からホッとした……。

のだが……次の瞬間、怒りと照れが入り混じった感情が一気に溢れ出した吾郎の声が返される。




「て、てめ、清水……!いや……じゃ、なくて……その……お、お前なぁ〜〜なんで電話が今なんだよ……!?」

「えっ……ご、ごめん……!今って、電話したらダメだった……!?じゃ、また後で……」

「ちっ……違うっての……!?電話は今でいいんだよ……!!」

「は……??ど、どういう事だよ……?今、電話してて……いいの、か……?」

「いいに決まってんだろ……!?散々、そう留守……電に………」




と……そこまで言って、最後に自分が留守電に残したメッセージを思い出した吾郎の声が消え入る……。

残してしまった留守電への声を、自分で消す事は出来ない……。

言ってしまった言葉は……嘘では無い……嘘では無い……の、だが………。



先程……最後に残したメッセージ……それは……普段の自分なら間違いなく言えそうにもない言葉だった……。

それを残す為に携帯を手にした時……しばらくは発信をする事が出来ずにいた自分。

その後どうにか、えいっ!と気合いを入れながらの発信をしたのだ。

それなのに……いざ、メッセージを残す時となったら、自分でも不思議なほどスムーズに出てきてしまったあの言葉……。

それを思い出した事で、吾郎は真っ赤に染まってしまった顔を手の平で覆った。

そのまま俯くように頭を下げた吾郎に、薫からの声が返される……。

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