〜トラ年の初詣〜 全4P
〜トラ年の初詣〜
新年が明けた1月1日………
吾郎と薫は、2人だけで少し遠出しての初詣に向かっていた。
「ふあああぁ〜〜」
並んで歩いている薫がした大あくび……それを見た吾郎から呆れ顔での声がかけられる。
「なんだよ、こんな真昼間っからよぉ……ずい分と眠そうじゃねぇか」
「え……だってさぁ〜昨日は年越しで、それこそ寝たのが夜中の3時過ぎだったんだもの……」
再び、口元に手を当てた薫がフワワァとして見せたあくび……。確かに言われてみればの、寝ぼけ眼とだるそうな表情での薫の様子を見て、吾郎がニヤリと笑った。
「へぇ〜〜だから、顔中よだれの跡だらけなのかよ?道理で納得ができたぜ」
「えっ……ええ〜〜!?う、うそでしょおおぉっ!?」
自宅を出発し、吾郎と共に電車まで乗ってここまで来たのだ。その間ずっと、今言われた通りのあり様だったとしたら……そう考え、恥ずかしさから血の気さえ引き始めてしまった薫……。大慌てでショルダーバッグから鏡を取り出そうとしている薫を見て、隣りを歩く吾郎が笑い出す。
「バァ〜カ……!今日は、しっかり化粧もしてきてんじゃねぇか?なのに、よだれの跡なんてついてるわきゃねぇだろが」
そう言われ、薫は今朝の自分の行動を思い返す……。吾郎との約束の時間が迫ってきたものの、寝不足による自分のやつれたような酷い顔にホトホト困った薫は、そんな状態の顔を少しでも直そうと、珍しくもメイクをしてきた事を思い出したのだ。
「そ、そうだった……!も、もう〜っ!新年早々、変なウソつくなよな本田っ!?」
「んだよ……お前こそ、新年早々ボケた顔してっからだろ?早寝しろ、早寝っ……!」
「あ、あのなあ〜!?年越しに早寝するヤツのほうが、少ないっての……!!」
「俺は、しっかり早寝したぞ……!年越しそばもしっかり食ったしな。そんで今朝も、しっかりひとっ走りしてきたしよぉ」
「そりゃあ……元々朝型の本田はそうだろうけどさぁ……まあ、あたしも今日の予定を考えたら、もう少し早く寝なきゃだったけどな……」
人差し指で自分の頬を押しながら、反省の色を浮かべた薫。
そんな薫の様子を横目で見つめた吾郎は、その頭をコツンッと叩いた。
「大体……そんな化粧なんかいらねぇんだよ。そんなもん塗ってる時間があったら、その分も寝ときゃ良かったじゃんか」
吾郎がメイク嫌いなのは知っている……だからと言うわけでもないが、普段はメイクなどする事もない自分がしてきてしまった今日のほんのりメイク……。それに対し、どう聞いても不満気に言われた吾郎からの言葉に、薫は少しばかり慌てた声を返し始める。
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