〜グレー色の空の下〜 全16P

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そして………


帰り支度を済ました寿也を、玄関先で見送った3人。

まだ雨が降り続く中を帰る寿也に、3人それぞれからの「気を付けて」の言葉と一緒に手が振られた。



その後、3人でリビングに戻るとすぐに、大河からの声が吾郎と薫に向かってかけられる。




「さて、と……。そんじゃ、俺はしばらくここにジッと居座らせてもらうんで、お2人は安心して2階へどうぞ?」




足に体重がかからないよう、ソファーの背もたれに手を添えながら座ろうとしている大河の言葉によって、並んで立つ2人の顔が同時に赤らむ。




「え……で、でも、夕食はどうすんだよ……?これから作ろうと思って、材料も買ってきたし……」

「ああ〜無理、無理!今はまだ食えないよ。昼過ぎから、先輩達と山ほどピザ食っちまったしさ」




片手を振り、もう片方の手でテレビのリモコンを取りながら答えた大河。その後すぐに薫達へと振り返る。




「仕事してきた姉貴には悪いけど、夕飯ならもう少し後でもいいんじゃねぇの?まずは、先輩とゆっくり話でも何でもしてこいよ」

「な……何でも……って、あんたねぇ〜〜………」




ますます染まった薫の顔を見て、ククッと笑った大河の言葉が続く。




「茂野先輩……!!こうなったら、姉貴の作る夕飯も食ってくつもりなんじゃないんスか?だったら、さっさと2階に連れてかないと時間が無くなりますよ?」




それを聞いた吾郎。顔の赤みは残ったままでの答えを返した。




「…ったく……!いつまでたっても生意気な後輩のまんまだな……?仕方ねぇ!あのポッキーは、お前一人で食っちまってもいい事にすっからよ」




その言葉が終わらないうちに、薫の腕をつかんだ吾郎。突然の行動に小さな驚き声を上げた薫が、廊下へと向かって引っ張られてゆく。

その後、リビングのドアが閉じられた音を聞き、大河は独り言を呟いた。




「ま〜だ、ポッキーとか言ってるし……。ほんと、いつまでたってもわけのわかんねぇ先輩だよなぁ……」




自分が溢した言葉で、思わず笑いが込み上げてきた大河。

そしてそれに合わせたかのような見事なタイミングで、付けたばかりのテレビに明日のウォリアーズ対グリズリーズ戦の話題が報道され始める。

今季初となる最注目の対決として、先発予定の眉村とそのライバルとされる寿也の顔がテレビ画面に映し出された。

吾郎も含め、同じ海堂卒でNPBへと入団した偉大な先輩達……。

自分もその中の一員として、これからもずっとプロの世界での努力を続けていこうと感じた大河の表情が、自然と引き締まるのだった………。

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