昨日、真ちゃんとケンカした


というか、ちょっと気まずい空気のまま帰宅したから話しかけづらいって感じかな


普段からいろいろと言われまくってるんだけど


今回はそういう感じじゃなくて…

オレは怒るというよりも寂しかった、んだと思う


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それは昨日の練習試合中だった

誰も故意ではないことはわかっているが

バスケットボールという競技上人と人がぶつかってケガをするということはよくあることだ


それでも
この秀徳の獲得したキセキの世代“緑間真太郎”のケガとなると話はデカくなる訳で


原因は
ゴール下の混戦時、緑間のディフェンスでオフェンスが無理やりダンクで押し込もうとした時だった

かなりの接触だったので結局ファールで点も入らず、その人は監督にも注意されて終わったが
オレは真ちゃんが顔を歪めてた瞬間を見逃さなかった


だから

『おい、大丈夫か?』

と尋ねたが

『…別に、大したことないのだよ』

と切り返され

なんだ、心配して損した


なんて思っていた数分後フリーで真ちゃんがスリーを外したのだ


『え?』

『…、っ』


あの緑間真太郎が外した

ほぼ全員が
信じられない、ウソだろ
みたいな顔をしている
それは味方に限らず敵も同様だった


『おい、やっぱりオマエさ…』

『うるさいのだよ高尾、試合中だ』


『いや、でもさ』


『高尾どうかしたのか?』

『あ、大坪さん、たぶんコイツさっきのディフェンスの時に左手ケガしt『高尾っ!』


『なっ、そうなのか?』




『秀徳高校タイムアウトです』

少しごたごたしかけた所で
監督がタイムアウトを取り

オレや大坪さんが事情を説明した

そこで大事をとって真ちゃんは交代することになった

本人はどこも問題ないと一貫して譲らなかったが。


結局試合自体はそれまでの得点差もあって秀徳が勝った

真ちゃんが抜けたとはいえ、さすがは東の王者といったところだろう。



試合後は練習試合の相手に勝ったぐらいで浮かれるものも居らず、


試合後はそれぞれで反省したり、汗を流したり、いつも通りのムードが漂っていた


そんな中には真っ先に帰ろうとするやつも…

『…それじゃあ、お先に失礼します』


って真ちゃん早くね!?


『おっおい、緑間!一応ケガ診てもらっておけよ』

という先輩の言葉に対して


『…結構です』


と言い残して出て行ってしまった


そして
オレはアイツを追いかけて控え室から飛び出した
先輩に言われたの半分、心配半分で



『なぁっ、おい待てって緑間』


『なんなのだよ、高尾』


あからさまに不機嫌だが
とりあえず引き留めに成功


『いや、これからミーティングとかあんだろ』


『必要ないのだよ』


イラっとくるがここまではいつも通りだ


『じゃあケガは?大丈夫なのかよ』


『大丈夫だといっている、要件がそれだけなら帰る』


『おい待てって、オレは一応心配してんだけd『迷惑なのだよ』

『あ?』


『勝手にケガ人呼ばわりされて下げられる覚えはないのだよ』

『いや、だってホントのことだろ?』


『自分のことは自分が一番よく分かる、心配される筋合いはないのだよ』


そのまま緑間は後ろを向いて去ってしまった


『…っ』


何故か言い返す気力が失せた


同じチームで心配して何が悪いんだよ


チームプレーを意識し始めたと思ってたけど、結局個人技ってか?


もっとチーム信頼してもいいんじゃねーの?


っていろいろと言ってやりたかったけど、試合の疲れなのか自分の無力感なのか、なんかよくわからなかったんだ


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そんで今日は普通に学校だがまだ真ちゃんと顔を合わせていない

しかもよりによって今日は部活無い

よって余計話す機会が無い



…てかマジなんでこんな悩んでんだろ…



昨日はごめん、はおかしいよな…

ケガのことに触れるのもまた同じような対話に成りかねないし…


空は自分の心を映し出しているかのような曇天


こういう時に曇られると本気でネガティブ思考になりそうで嫌だ


なんてウジウジしたまま1日が経とうとしている

授業もなんか頭に入らないし、本気で真ちゃんのことしか考えなかった気がする
(って乙女かオレは…)明日からはまた普通に部活だから今日中に解決しときたかったんだけど

なんか無理だ…もう帰ろっかな…



『『………』』

なんて思って校門を出ようとすると、バッタリ会うんだなこれが


『…あ、真ちゃん、なんか久しぶりだねー』

自分で言うのもアレだが
なんて無理やり感溢れた話しかけ方であろうか


『…』


憐れみの視線か、または蔑んだ視線なのかを受けた


『…って無視すんな』

さすがに、仕方ないほどの話しかけ方だったけど


これはチャンスだ


オレはなんとか話を着けようと真ちゃんを追いかけた




『…ついてくるな』

『別にいいじゃん、こっちに用(真ちゃん)あんだから』



………

『いい加減にするのだよ』


『何が、』


『要件があるなら聞くが、付きまとわれる筋合いはないのだよ』


『…うーん、まぁ、用はあるっちゃあるけど?』

正直何を話すって決まってはいないが、このままほっとくのはダメな気がするから『…だったら早く話すのだよ』



『っつてもなー…ん?雨?』


いつの間にか空は厚い雲に覆われて今にも大雨になりそうな雰囲気が漂っていた


『真ちゃん傘持ってる?』


『は?持ってないのだよ』


『…とりあえず、走れ!雨宿りしよう!』


『…!おっおい!』


オレは真ちゃんを引っ張って近くにあった屋根とベンチがあるだけの小さな公園に駆け込んだ

走ったため、本降りになる前に雨宿りできたが、それでもかなりびしょびしょだ。


『いきなり降り過ぎだろ…あ、真ちゃん、寒くない?』

『…大丈夫だ』


といっても秋から冬へと変わるこの季節に、雨に当たって外の風に当たり続けたら寒くない訳がない、というか自分は寒い


近いうちに試合もあるのだからこのエース様に風邪を引かせる訳にはいかない


………



『なんのつもりだ高尾』


『だって寒いじゃん?』


絵としてはかなりシュールなのは自覚している
座っている真ちゃんに後ろからオレが抱きついてる体制

幸運にも大雨のおかげで
道を通る人も少ないし、公園にオレたちの2人しかいないので誰にも見られることはない



『離すのだよ、高尾』『やーだね、風邪引かれる訳にはいかねーし』


離せって言っても
無理やり引き剥がしたりはしないんだな

体格差考えたら確実にオレが負けんのに…


『意外と優しいんだな、真ちゃんって』


『…意味が分からないのだよ』

なんだかんだでいつも通りに話せてることにほっとする『なあ、なんで昨日あんな試合出たがったわけ?』



『嫌なのだよ』


『は?』


『…オレのケガのせいでチームが負けるのは…チームのために全力で貢献できないで終わるのは嫌なのだよ』



ああ、そっか、この人は



常にキセキの世代っていうプレッシャー背負って

レギュラーとして秀徳の全バスケ部の思いを背負って


秀徳のエースとしてコートに立ってる


チームのために
自分を通すために

手を抜いたところなんて見たこと無い



全部抱え込ませて、背負わせてんのは

オレらの方じゃないか。


『真ちゃん、ごめん』

『…』


この人は練習試合なんだから、とか
考える人じゃない


目の前に向かってくる敵がいたら全力で立ち向かってこそ

人事を尽くすってことなんだろ?


真ちゃんは自分のチームの不利になるぐらいのケガじゃないって分かってたから


でもさ、1つだけ言わせてほしい


『けど、真ちゃんはもっとチームを信じて頼っていいと思う。

正直真ちゃんに頼らなきゃ勝てない試合もあるけどさ、


勝ちがオマエのおかげだけじゃないし
負けがオマエのせいだけじゃないから

そんで、オマエの心配ぐらいはオレにさせろよ』


少しでも
負担を減らせるように

頼ってもらえた時にしっかり構えてられるように

もっと強くなりたいって思った


なんかすげーおとなしく聞いてる真ちゃんの顔覗き込むと


『…オマエにそんなこと言われる筋合いはないのだよ』

なんて言ってきやがったから
後ろから思いっきり抱きついてやった




天気はホントに雨だったのか疑うほど、すっかり晴れていた



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緑間は変人マイペース占い信者だけど、責任感は人一倍強いんじゃないかなと思って書きました。それに高尾くんは気付いて1人で抱えんじゃねーよってことを伝えた訳です、はい。


embraceは「抱く、受け入れる」って意味です。

2012*08*29


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