刀剣乱舞 | ナノ

みんなで子どもの日を祝う





「端午の節句おめでとー。ほらガキども、審神者様からさくら棒のプレゼントだぞー」

丸太を抱えるように腕一杯に桜色の菓子を抱えたみわの登場に、大広間にいた身丈の小さな男士は一斉に黄色い声をあげた。

「なにそれなにそれかわいい!」
「うう、みわさま。いっぱい抱えてかわいそう…重くないですか?」
「なんだそれ!めでたそうだな、祭の道具かなにかか!」
「僕いっちばん太くて大きいのがいい」
「い、いけません。みな離れなさいっ主が動けなくなってしまいます」
「まぁたけったいなもんを持って来たな、大将」

「あまいお菓子だよ。みんなの分あるからね〜。あと、ミッチーがかしわ餅も作ってくれたよ」
「はい。白はこしあん、桜はしろあん、緑がよもぎ味だよ」
「沢山作って頂いたからね、急くことはないよ。焦らず良く味わって食べなさい、みな燭台切殿とみわ殿に礼を」

「ありがとうーございます!」

ひまわりのようないっぱいの笑顔と贈られた感謝の言葉に、みわも光忠もへにゃりと笑って「どういたしまして」と答えた。そうしているうちに、頼んでいた物を抱えたへし切長谷部と獅子王が広間に顔を出した。

「主、お待たせ致しました」
「おう、サンクスさんくす。ちょっと奥にしまっちゃってた?時間かかったね」
「いや、物自体は直ぐに見つかったぜ。途中でやっかいなじっちゃんどもひっかけちまってな」
「じっちゃん?」
「主いけません、重いですから俺が持ちます」

長谷部の腕から箱を奪い取ろうとしながらみわが小首を傾げる。ひょこりと縁側の奥を覗くと、そこにはにこやかな青と白の老が…げほんげほん。ご老人がいらっしゃった。

「ふむ、なるほど。今日は端午の節句であったか、いやはやこの歳になるとどうにも日時に疎くなってな」
「どうれ、俺からもいっちょ祝いのサプライズを…!」
「結構ですので、鶴丸殿はそこに座っていらしてください」

がたりと立ち上がった鶴丸だが、しかし一期一振により絶対的保護者の牽制を受けぐっと後ずさりする。笑っているのに笑っていない一期の頬には抜刀もやむなしと力強い筆跡で書かれているような気がする。まるで鶴丸を、小さな子供に悪戯しようと悪巧みする不審者のように扱うそれも、この本丸では日常の光景である。ゆえに、誰も気にしない。

「みわちゃん、それなんですか?」
「桐の箱か」
「ん。以前、祖父母の家を整理するときに譲ってもらったの。今じゃかなり貴重品だけど、うち小さい子どもいないからすんなり手に入ってねぇ」

るんるん気分で箱の紐をとくみわに、両手に柏餅をもった鯰尾藤四郎とさくら棒を咥えた骨喰藤四郎が寄る。その間にも、長谷部と獅子王がてきぱきと場所を確保している。ゆるりと箱を開けると、古めかしい紙と布の匂いがする。そこまでくるとそれがなにか気づいたのか、鯰尾と骨喰が興味津々に身体を寄せてくる。

その様子にくすりと笑いながらみわはひときわ大きな布の包みをとりだし、そっと包んでいた布を取り去った。瞬間、四つの紫苑の眸に小さな花火が沢山弾けた。

「兜だぁーーーーーー!」
「おおっ…!」

それからはてんやわんやだった。
長谷部と獅子王監修の下、ミニチュアサイズの兜が大広間の背にきちんと飾られる。特に誰をモチーフにしたというものではないのだが、短刀の性質なのか、子ども達はみな動かない鎧の周りを囲ってキラキラした目で鎧を見ていた。どうやら相当お気に召したらしい。

「主―、いわれた通り削ってつなげてはみたが…これでいいのか?」
「おおーありがとう御手杵。良い感じに長い棒ができたね」
「こちらも用意できたよ、まったく半日で作れなんていうから構図を練る時間も無かった。今度はもっと予めいってくれ、そうしたらもっと情緒のある雅なものを作ってみせよう」
「あ、子どもの祝いなんでそういうのは良いです」

御手杵・蜻蛉切が作ってくれた長柄に、歌仙兼定と石切丸が用意してくれた鯉を括る。そうしてできあがった鯉のぼりを、太郎太刀と次郎太刀の力を借りて庭の物干しに括りつけた。国広兄弟作の矢車がくるくる回りだすころには、大広間はみんな集まってどんちゃんさわぎとなった。

「端午はね、遡れば平安の時代から続く風習なんだよ」

光忠と宗三が作ってくれた三色団子を片手に、銀朱の袍を白の緒で結んだ石切丸が言う。

「勇猛な男子を称え貴ぶ尚武(しょうぶ)習慣でね。まあ元は、魔除けのための行事なのだけれど」
「端午の「午(ご)」の音が五(ご)月と同じだろう。そこから意味が砕け、「午」月の「端(はじ)」め。つまり5月5日のこの日に節句節供を行うとしたんだ」
「はじまりなら1日じゃないの?」
「五節句だよ」

石切丸と鶯丸のうんちくに眉を寄せると、意外なところから助け船がでた。光忠手製の粽(ちまき)を頬ばる御手杵がとすんとみわの隣に座りもごもごしながら続けた。

「重ね数字は縁起がいいっつーやつだよ。特に奇数が良い、その頃になるとあっちこっち行列だらけさ。あ、粽食うか?俺のじゃないけど」
「食べる。行列?」
「大名行列のことさ。でも馬印の彼がいうなら、それは参勤交代のことだろうね」

楽しそうに笑う石切丸、そうすると目元の赤い紅が弧を描いて南天のように丸まる。二三枚のティッシュに包まれた熱い粽。袖口を手繰り寄せて、なんとか笹を剥すとほかほかの炊き込みご飯が顔を出した。どうやら、こちらは大人用の腹ごなしに拵えてくれたらしい。

「あっち、ちょ、御手杵よく食べれるね。熱くない?」
「ふまいぞ」
「味は聞いてない。っていうか、ミッチーが作ったんだから美味いのは当然でしょ」

すでに食べていた粽を平らげどこぞからかっさらって来た新しい粽を素手で開く御手杵にぎょっとしながら、なんとか食べようと口を開く。だが湯気が熱い、笹が邪魔で口に入らない。イライラしながら格闘するみわのよこで、御手杵がもぐもぐと粽を咀嚼する。その様子にくすくす笑いながら、石切丸が提案する。

「匙を借りてきたらどうだい」
「な、なんか負けた気がする…」
「……では、ぬしさまはこれがいらぬと申されますか」

ひょいと目の前を木目の鯉がのぼった。思わずぱしんと掴めば、みわの横からにょきっと狐が飛び出した。垂れ目の柘榴色の目が悪戯に微笑んだ。少し爪の長い指がゆらゆらとみわの前に揺らすのは箸だった。

「ありがとう小狐丸。褒めて遣わす」
「なに、ぬしさまの自慢の愛狐として当然のことをしたまでで御座います」
「ほんに、兄上はよう口が回るなあ」

ぱちんとみわが箸を割るころ、新たに三日月宗近と小狐丸が腰を据えた。

「して、なんの話をしていたのだ石切丸。主に語るにしてはちと小難しい内容が聞こえて来た気がするが」
「この程度で音をあげるのも問題だがな」
「ふふ、鶯丸殿は手厳しいなあ」

綺麗所が三人並んでこれは新手のお花見か?
粽を食べながらみわは思った。だがしかし、御手杵・みわ・小狐丸が並ぶこちらは差し詰め花より団子チームといったところか。みな飯を抜かれていた子どものように飯を食っていた。

「小狐丸のそれなに」
「嗚呼…さきほど、眼帯のものが追加だと持ってきたものです。なにやらめでたい席を祝うものとか」
「食べていい?」
「勿論。少し辛みが効いておりますゆえ、お気をつけて」

小狐丸が片手で持っていた汁椀を、みわは両手で確りと受け取った。みわの両手だと足りないくらいの椀には、たっぷりと汁物がそそがれていた。香ってくる醤油と良い香りと、踊る沢山の具材と小さく切られた餅にごくりと喉が鳴る。どきどきしながら飲むと、少しだけ舌がちりりとした。

「…おいし」
「南蛮もちというらしいです。気に入ったのならまた作る様に言い含めておきましょう」
「自分で言うよ」
「ぬしさまがそうおっしゃるのなら」

やんわり断るみわに、小狐丸もふんわりとした雰囲気を崩さない。まるで暖簾に腕押ししているような感覚は、三条派特有のものだ。それにも幾分慣れた、加えて多少キツイことを言っても三条のものはてんで気にしないことも知っている。なのでみわは気にした風もなく、もくもくと汁をすすった。小狐丸は小狐丸で勝手に粽を食べ始める。フリーダムだ。

「にしても、主がこのような席を設けるとは驚いた。正直、主はこういうものには疎いと思っていたからなあ」
「む…なにもしていない癖に言いますね」

三日月の言葉にみわがむっと眉を寄せる。だが、彼は涼やかな目元を曇らすことなく嫋やかに微笑み胸を摩って見せた。

「なにをいう。俺も祝っておるぞ、ほら菖蒲色よ」
「?」
「ぬしさま、端午の折には、菖蒲を飾るのです。本日は菖蒲の節句でもありますゆえ」

訳が解らないということをとりあえず、餅を食べて誤魔化した。
その様子を察してくれたのか、また御手杵が助け船を出してくれる。

「解るか、菖蒲(しょうぶ)だ。真っ直ぐで鋭い葉っぱだよ、ちょっと匂うやつだ」
「わかるよ、紫の花がついてるやつでしょう。でも三日月の着流しは緑だよ」
「あーそりゃお前さんが間違ってる。菖蒲に花はついてない」

がしがし頭を掻く御手杵に、みわはもう白旗寸前だ。
目に見えて混乱しているその様子に、年長者たちがくすくすと笑った。バカにされているのは解るのか、みわが唇をとがらせ顔を赤く染める。

「そんなこといわれてもわかんないもん…」
「おやおや、そう拗ねないで下さいませ。ぬしさまが愛らしゅうて笑うたのですよ、」
「そうさ、誰も知らないことはある。大切なのは学ぼうという姿勢だ」

湯のみを傾ける鶯丸の言に乗せられ、みわはむすりとしながらもしゃんと背筋を伸ばした。その様子に普段はのらりくらりとしているばかりの三日月が、珍しく教えの姿勢をとる。

「主よ。いま主が思い浮かべているのは、花弁に白い菱の模様がある紫の花か」
「うん」
「それはあやめよ。菖蒲と同じ字を書く、こうだ」

そうして三日月が机に人差し指をなぞらせる。それをまじかで観ようと椀を置いて乗り出せば「手を」と催促させた。無造作に差し出したみわの手を三日月の白魚の指がすくいとる。そうして掌にもう一度人差し指が躍った。「菖蒲」

「うん、なるほど」
「これに似た花で杜若(かきつばた)というものがある。同じ紫だが模様が違う。花芯から雫ように白い模様が伸びている花だ」
「あやめよりふっくらとしていて、湿地に良く咲いているんだよ」
「ほー…」

三日月から返ってきた手を胸に宛てながら、石切丸の補足に頷く。

「加えて、花菖蒲(はなしょうぶ)というものがある。江戸の時分に流通した花でな、杜若の白い模様が黄色なのが特徴だ」
(あ、やべ…そろそろわけわかんなくなってきた)
「そして最後が菖蒲でございまする。花のないあやめ草、鋭い葉が剣に似ていることから「剣花」とも呼ばれますなあ。邪気を祓い、悪い縁を斬る破魔の力が宿っております」

「ゆえに端午の節句で用いられる。あやめが剣、剣が武に通じる。くわえて、菖蒲(しょうぶ)という音は、尚武(しょうぶ)と同じだろう? だから縁起物とされるのだ____どうだ、俺がなぜみどりの衣を着ているか少しはわかったか」

「……………ちょっと、だけ」

むっすりと、だが素直に答えたみわに、どっと笑いがおこる。ひどいはずかしめだ!

「というか、三日月きょうが子どもの日だって知らなかったって言ってた! そんな服着てきたってことはうそじゃん! ダウト!三日月ダウトー!」
「はっはは、昨夜あれだけてんやわんやしておいて何もない思う方が難しいぞ。まあ、とりあえず当たりをつけて手近の節句に合わせてみたが…まあこうもぴたりと当たると嬉しくもあるな」
「ッケ 朝っぱらから弟分パシって良く言うぜ」
「うわっびっくりした」

真横から伸びて来た赤と白の吹き戻しに驚き、みわがびくりと体を震わせる。
犯人は何時の間にか後ろにしゃがみ込んでいた白い方の老人だ。内番着に身を包んだ彼は、ぶすりとした様子で三日月をねめつけた。

「主よ、こいつが犯人だ。A級戦犯だぞ。朝っぱらから俺を蹴り起して一張誂と集ってきやがった。その上、寝起きの俺を見て酷い顔だと抜かしやがった! 自分だって寝癖で酷い髪だった癖にっ 雄鶏だってもうちっとマシな恰好で朝鳴きするってーの」
「ぎゃあぎゃあと鳴くな、風情のない雪客(せっかく)よな」

「俺を!あんな!ゲロまき散らし水鳥と一緒にするな!」

鶴丸が顔を真っ赤にして立ち上がり、すわ三日月に怒鳴りかかろうとする。だが、それはぬるりと後ろから現れた保護者の修羅に「言葉遣いが汚いですぞ!!」と見事な面打ちを食らっておじゃんになった。

みわはとりあえず遺品の吹き戻しをそっと拾った。吹こうとこころみたが、「お止め下され、ぬしさまが汚れまする」とやんわり小狐丸に取り上げられた。汚れるて。

「クソ…だから三条は嫌いなんだ…主、こんな性悪共と一緒にいると目が腐るぞ、」
「どの口がそれを」

ずるずると這いずって来た鶴丸がみわの膝を引き寄せ、ぼすんと膝に顎を乗せる。その無遠慮な様子に小狐丸が瞳孔を開いて地獄の鬼のような声で拭き戻しを鶴丸の頭に突き刺した。さすがに可愛そうになったので、みわはそっと吹き戻しを没収した。おもちゃを物理攻撃の獲物にしてはいけません。

「つるさん、おもい」
「んっ〜〜〜、いいじゃないか、年寄は敬うものだぞ。ほら、それに今日は縁起物を担ぐ日だ。主も存分に俺をめでると良い!」

ごろんと引っくり返り、鶴丸が「そら」とみわに両手を掲げた。白く細い睫毛に覆われた満月の瞳が艶やかな色と楽しげな色を同居させて、何かを期待するにみわを見つめる。思わず見つめれば、手袋のない素の手がわしわしとみわの髪を毟る。時折頬に触れる指は、三日月のそれより節がはっていて少し硬い。だが、あったかい手だ。

「〜〜〜っ鶴の!どけ!なんと妬ましく羨ましい!」
「本音が出ておるぞ、兄上」
「いやだね、散々アンタらにいじめられたんだ。まあ…そのお蔭で、いまは俺の主さまだが」
「こンの悪童(くそがき)がっ…!」
「小狐丸どうどう」
「おいおい、喧嘩は外でやってくれよ」

すわ本体を顕現させ鶴を仕留めようとする小狐丸に、みわが手を伸ばしよしよしと撫でてやる。小さなみわの手を、武骨な小狐丸の手が取り口元を覆うように引き寄せる。その間で唇から唸り声をあげる小狐丸。すりすりと甘えてくる野性を宥めていると、人の多い広間を縫うようにしてやってきた大倶利伽羅が呆れ顔でみわを睥睨した。

「何をしてるんだ」
「ん 飼い主の義務を果たしている?」
「おい、どけじいさん。邪魔だ」
「おい坊よ!いくら旧知の仲といえ、先人を足蹴にするのは頂けいてぇ!」

げしげしと鶴丸を蹴っていた大倶利伽羅だが、ぴーちくぱーちくと小五月蠅い鶴丸にキレたのか。思い切り振りかぶって鶴丸の横腹を蹴り抜いた。いったいどれほどの衝撃か、ごろんっと御手杵のほうに飛んで行った鶴丸、巻き添えをくらった御手杵と合わさって悲痛の声があがった。

長谷部が「静かにしろ!」と庭に転がった二人の制裁に向かう一方で、大倶利伽羅はすとんとみわの前に腰を下ろす。そして片手に持っていた盆から薄紅の陶器の器をくれる。なにかと受け取れば、中にはフルーツと暖かいヨーグルトが踊っていた。

「うわあおいしそう!」
「光(みつ)から、お前と食えと」
「わーい、ミッチーありがと」

「ん」と大倶利伽羅から差し出された匙を受け取り、広間を見る。そこには宗三と一緒に子どもたちにデザートを配っていた光忠とぱっちり目が合う。にっこり笑って口パクでいただきますと言えば、光忠はきょとんとしたあと。ふわっと笑って召し上がれと口パクを返してくれた。

「うまい」
「おいしいねー」
「それは良かった。僕も手伝ったんですよ、それ」

そう言って大きな盆を手にやってきた宗三。どうやらデザートを配りにやってきたようで、薄いガラス皿に揺れる白い寒天に餡蜜・きな粉がトッピングされたそれを手早く配って行く。

「む…主と違うぞ」
「あれは、彼女と龍の坊やだけです。女子供は腹を冷やすものではないですからね」

子どもって大倶利伽羅のことかー!
未亡人の溜息をついて語る宗三。その一言にものすごく騒ぎ立てたかったが、たっぷり蜂蜜のかかった部分を食べて幸せそうな顔をしている大倶利伽羅にぐっと衝動を堪えた。みわ、空気よめるこ。

「まあ、わたしはなんでも好ましいよ。光忠の末が作ったものはなんでも美味しいからね」
「それに風情がある、申し分ないな」

そういって幸せそうにぱくぱく寒天を食べる石切丸に、あ、彼もこっちの住人だったとみわはこっそり思った。彼は平安が産んだ和泉屋吉蔵だった。彼の方が年上だけど。鶯丸は上品に寒天をすくっている。三日月は小さい口でちまちまと匙をすすめていた。

「あっるじ〜! 食後の運動にばとみんとんやろうよ!」
「清光。いいよー」
「よっし!じゃあ俺、主とぺあね!」
「あ、加州清光ぬけがけっ…!」

食べ終わった椀を大倶利伽羅と片していると、後ろから加州清光が圧し掛かって来た。シンプルな臙脂色のシャツにスキニーパンツとイケメン風なのに、長い黒髪を結ぶうさぎのボンボンでちょっとズレた雰囲気になってしまっている。対して、清光にバトミントンのラケットで突き刺す大和守安定は、ブラウンの半ズボンにストライプの長そでを着ていた。まるで普通の男の子だ。

「ミッチーごちそうさま! 倶利伽羅、片付けお願いしていい?」
「俺一人で十分だ」
「食後なんだから、激しい打ち合いは避けるんだよ」
「はーい」

「はは、子どもは元気よなあ」

清光に引き摺られ、庭に飛び出したみわたちを見て三日月が大らかに笑う。それに同意するように、数名が穏やかに笑った。

にぎやかな様子に惹かれたのか、あっという間に広間から飛び出して行った短刀たち。散らかった机を片づけようと光忠がふきんと盆をもって土間から上がる。宗三が洗い物を、歌仙が散らばった玩具をかき集め、太郎が座布団を回収してくれる。盆を畳みに、机を吹こうとした光忠の目にふと鮮やかなものが写る。

散らばる折り紙の雛段に、桃色の少し歪なお雛様が座っている。その隣にはお内裏様ではなく、少し多い五人囃子が並んでいる。

(…いや、これは衛士かな)

マジックで書かれた刀の模様にくすりと笑う。
個性豊かな刀剣の衛士に囲まれ、にこやかに笑うお雛様。その様子に嗚呼と、光忠はおもう。

_______________雛飾りを仕舞わずとも、我が主はしばらく嫁に出られそうにはないな。

「よし、私もやろう」
「ちょ、石切丸くん。その我儘ボディでなぜやろうと思ったんだい」
「いいですよ。ただし青江さんとペアでお願いします! 俺うっかり押しつぶされたくないんで!」
「それがいい」
「鯰尾くんたちいっそ清々しい程に素直だよね」

「ッシ 首落ちて死ね!加州清光!」
「やらせないよ、っと!」
「砲は得意ではないけれど、暗殺・闇討ちはおてのものってね ほら兼さん!後ろがガラ空きだよ!」
「クッ やらせないぞ兄弟…!」
「ナイスだっ山姥切! そおら返すぜ国広ォ!」
「拙僧を忘れてもらってはこまるぞ! ふん!」

「そおれ大将、そっちにいったぞ」
「っと、っと」
「お上手です、主」
「きゃーこっちきた あんっ手がすべっちゃった!」
「ヒッ 剛速球…!」
「乱! 弟をいじめるのはやめなさいとあれほど!」
「でも次は俺だから問題な〜し 返します、かっと…!」
「次の俺はどうすればいいんだ蛍丸〜〜〜!? ぎゃー!」
ちゅどーん
「愛染くーーーん!」

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