刀剣乱舞 | ナノ

三日月宗近と追いかけっこする


「あ、かけっこしてる」

近侍の堀川国広を連れて戦歴を確認していると、本丸の庭を元気な声が横切った。短刀たちがかけっこをして遊んでいるようだ。

「うわあ、楽しそ」
「混じりにいくのは自由だけど、僕は残業しないからね」
「そ〜 だけど仕事あるから後にしよぉ〜」

庭に飛び出そうとした足を、そっと仕事部屋に向かう廊下と戻した。がっくり項垂れるみわの後ろで、堀川国広が当然と言う顔で頷く。この脇差マジ鬼畜。

「堀川くん。 堀川くんはなんで和泉守には優しいのに、わたしには塩対応なの?」
「え、まさか自分が兼さんを同列だと考えてるんですか。烏滸がましいにも程がありますよ、蚤虫からやり直してきてください」
「人ですらない! ひどい、わたし審神者なのに! ご主人様なのに! あんま酷いこというと付喪神モード解除しちゃうからね!」
「僕はどちらでも構いませんよ。みわさんが、一人で仕事を片づけられるのならですが」
「________ズビマセンデジダァー」
「素直で宜しい」

そんなこんなで。どうにか書類を片づけ、庭に飛び出した頃にはすっかり時間が経過していたわけで。

「次は違う遊びにせぬか。じじいゆえそろそろ疲れた」
「えー」
「えー」
「えー」

「えええええええ!」
「っみわ、何時の間にそこに」

短刀たちに混じって不満の声をあげたみわ。何時の間にか混じっていた主の姿に、三日月宗近はびくりと肩を跳ね上げた。どうやら今日は、三日月が子守担当らしい。

「ぼくかけっこがいいです」
「ボクはママゴトでもいいけどね。 その場合ボクが団地妻で、三日月様が隣に住んでる三高のサラリーマン、みわちゃんはサラリーマンに片思い拗らせたストーカーJKね」
「あなや」

乱ちゃんの口からこれ以上情操教育に悪い単語が飛び出して来る前に、物理で口を塞ぐ。あぶねー!ちょっと誰だよ、短刀たちに変なこと教えたの! こういうの全部わたしのせいにされるんだからな! 主に一期一振に! アイツ、ブラコン拗らせてるからマジで恐いんだ!

「そうさなぁ、だが俺はもう走れん」
「み、三日月様おつかれですか?」
「うむ、じじいゆえな。長く走ったり跳ねたりは腰に堪える」
「みかづき、はしってないじゃないですか」
「走っていたぞ」
「ぼくがあるくのとおなじくらいのはやさなので、あれはしっているとはいいません」

縁側に腰掛けた三日月に、今剣が厳しいツッコミを入れる。だが三日月に堪えた様子はなく、「あはは」と穏やかに笑うばかりだ。笑う度に、肩が揺れて頭頂の双葉のアホ毛がぴょこぴょこ揺れる。あざとい。流石三日月宗近、あざとい。

「アレ、ちょっとゴキブリみたy」
「ッシ 国俊、三条のブラコン共に消されたくなかったら黙っときな」

ちなみに、三条もブラコン揃いだ。まあ、長兄である三日月宗近に対してのみだが…。特に、小狐丸が酷く拗らせている。三日月に「兄上」という時は語尾にハートがついているのに、みわを呼ぶときは「おいそこの」っとゴミを見るような目で呼びかけてくる。しかも舌打ちとかデフォルトだから泣きたくなる。あ、もうなんか思い出しただけで悲しくなってきた…ぐすん。

「あるじさま〜、みかづきにかけっこやるようにいってください」
「え、わたしが?」
「お願いいたします、主君」

ぐいと今剣と前田藤四郎に腕を引かれ、既にのんびりお休みモードの三日月の前に連れて行かれる。「ん?」と三日月がみわを見上げた。ぴょんと結えるアホ毛に、艶やかな夜色の髪が揺れた。ちりりと金色の装飾が星光のように煌めき、美しい三日月の打除けが濃紺の瞳の海に浮かんでいる。こうしてみると、彼の人知を超えた美しさがありありとするようで、みわはごくりと息を呑んだ。…うう、自身の凡庸さが恨めしい。

「あ〜……っと、」
「?」

がりがりと頭を掻きながら考える。そんなみわの袴を、急かす様に短刀たちが引いて来る。ちょ、袴ぬげる。

「あ〜……、じゃあこうしよう!」
「なんだ」
「かけっこで三日月が勝ったら、なんでもいうことひとつ聞いてあげる」
「あいわかった」

「返事はやっ!!」

よいせっと一息で立ち上がった三日月に、みわはぎょっと体を反らせた。っちょ、こいつ何を強請るつもりだ…!本丸(うち)資源かつかつだから高価なものは無理だぞ…!第一、うちの近侍様※堀川様がお許しになられるわけがねぇ!

だが、言った言葉はひっこめられない。にこにこと笑いながら、その瞳を隠しきれない愉しさでいっぱいにしている天下五剣様に、みわはスタートの合図を待たずに逃げ出したくなった。ああ…後ろで無邪気に喜んでいる短刀たちが羨ましい…。

「じゃあ、よーいどんのあいずでかいしですよー!」
「はーい」
「おー」
「わ、わーい」
「うむ」

だが、無情にもかけっこは始まろうとしていた。あれ、わたしは癒しを求めてここに来たんじゃなかったっけ?始まる前からすでにチキンレースな心情って、逆にストレス堪るんじゃないの?

「みかづきは10かぞえたらスタートです」
「あいわかった、」
「じゃあ、よーい………どん!」

今剣の合図とともに、短刀とみわが一斉に駆け出した。中でも今剣がぐんを抜いて早い。びゅんっとあっという間にいなくなってしまった背中を唖然として見つめていると、なんだなんだと屋敷の方が騒ぎ出した。

「あ、なにしてんのみわ様」
「き、清光…」
「かけっこです!」
「おお楽しそうだな!次は俺も混ぜてくれ!」
「ああ、ああ…そんな服装で駆け回って…堀川君に怒られても知らないよ。まったく…雅じゃない…」
「お前はなんでも雅に結びつけねぇと死ぬ病気かなにかなのか」

鶴丸はまあ後で加えてやるとして、同田貫。もっといってやれ。そこの似非雅を打ち負かしてやれ。そんな事を思っていると、わらわらと男士が集まって来た。くそっ見世物じゃねぇぞ!そう一喝してやろうと思った時、囁くような声で「じう」と聞こえた。

「あ、」

誰かが呟いた。誘われるように後ろをみると、あれ、あいいろがもうこんなに、ちか、__________、


「ぎゃああああああああーーーーーーーーーー!!!!」
「アハハハハハ」
「はやい!はやいうそっこれなっうそだろ!おい!!!」
「ほらほら、捕まえてしまうぞ」
「いやあああやめっくんな!なんでこっちくんだ!やめろ!」
「ん?だってなあ、みわを捕まえないとお願いをきいてもらえないからなぁ」
「のんきに喋りやがってちくしょう!!!しね!!!」
「アハハハ!」


ドタドタドタドタ!
かけっこから一転。一対一の熾烈を掻けた鬼事になってしまった。あっというまに庭の向うに消えてしまった二人を、置いてけぼりになってしまった短刀がぽかんと見つめる。あれ、これ自分たちどうすればいいの?



ドタドタドタドタ!

「おや」

びゅんと通りすぎた二つの影に、遠征を終えた石切丸と小狐丸が遭遇した。既に過ぎ去ってしまったが、まるでその光景が目の前にあるかのように小狐丸がほうと息を着いた。

「兄上…あのように愉しそうになさって」
「審神者の方は鬼に追われた亡者のような顔をしていたけれどね」
「あのようなゴミ屑でも、兄上の娯楽の役に立つとは。いやはや、生かしておいて良かった。____正直、そろそろ本気で目障りなので、食い殺してやろうかと思っていたゆえ」
「仮にも主に対してなんていうことを。まあ、…良いことであることは確かだね。………あんな楽しそうな三日月の顔を見たのは、一体何時振りだったかな」




「ほらっ捕まえたぞみわ!」
「どっしゃれあああっ乗っかるな!顔!顔こすれた!おもいっきり擦った!」
「む。   いつもと同じぞ?」
「そのお綺麗な顔ひっかくぞこの似非雅モンスター」
「ははっ ほんとうに、みわといると退

back

×
「#溺愛」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -