刀剣乱舞 | ナノ

主「この赤ちゃんのパパは誰やねん」


「おぎゃあ、おぎゃあ」
「…」
「…」
「……ぅそだろぉ…」

かつてないほど心底驚いた。驚きすぎて恐怖すら覚えるという顔で鶴丸が手で口を覆った。

他の男士も大よそ同じ様子である。玄関から一番近い居間で好き勝手に寛いでいた男士たちは、ふらっと政府から帰って来たみわがその腕に見知らぬ赤子を抱いていることに気づくことは容易かった。なにしろ隠すための布もないのだから当然だ。桃色の薄い服を着た赤子はぐずるようにして腕を振り上げ、みわの胸をとんとんと叩いている。それを抱くみわの表情は能面といって相違なく。やがて彼女はそっと逆手に持っていた紙を掲げ一言。

「今すぐ皆を呼びだせぇ…」

____________わたしを捨てた愛おしい人へ
_____あなたの子です、責任はとってください

「……き」

それは誰の声であっただろうか。

「緊急招集ぅううううううううう!今すぐ集まれえええええええいらこっちゃあああああ」
「うわああああああああああああ」
「嘘だろ!誰だ!誰がやらかした!!!」
「おおおお落ち着いてください主、我らは末端とはいえ神の世のもの。このような人の子、にょにょにょ女人に産ませられるわけありませんん!!」
「絶対ゆるさん。去勢してやるェ…」
「不届きものを炙り出せぇえええ!俺らの名誉とプライドがかかってるぞ!!マジで!!!」

閑話休題。

色々あって、一先ずわたしたちは落ち着くことにした。赤子は散々泣いた後、みわの腕の中ですやすやと眠り始めた。その顔は安らかなもので、よもや自分の所為で他人様が無実の罪を被せられているとは思いもしていないのであろう。

「腕疲れた」
「我慢して下さい、みわさん」
「堀川代わって」
「国広が抱いたらまた泣きだすだろ! 大人しく抱いとけ!」
「もういい、堀川ちょっとわたしの背中回って。背もたれ背もたれになって」
「…はあ、わかりました。お手伝いします」

堀川が片膝をついてみわの背に回る。それに容赦なくしなだれかかり、腕で赤子をあやすみわがこの事件の第一発見者になる。本日未明、彼女は政府からの帰り本丸の門前でぎゃあぎゃあと声を上げてなく赤子と件の手紙を見つけた。まさかとは思ったが、同時についにやらかしたかアイツ等とも思ったと彼女はいう。

「アンタ達、わたしに似てマイペースで好き勝手やってるじゃん。どうせわたしに何も言わないで花街や歌舞伎町遊び回ってるんでしょう?」

みわの言葉にほとんどの男士たちがぎくりと肩を震わせ、静かに視線を他所に逸らした。

それを見て「そらみろ」とみわは目で語る。素直すぎる同胞に、へし切長谷部は頭を抱えた。だが同時に、みわと同じくやはりという気持ちがあるのも事実だ。容疑者一同を含め、彼もまた、“主の影響をうけて”酷く自由奔放な所があった。

「みわさまっ 僕も赤ちゃんみていいですか?」
「うん、いいよ五虎退」

おずおずとやって来た五虎退がみわの言葉をうけてぱあと顔を明るめた。

「う、うわあ… かわいいです」
「寝ている間はね」
「ほっぺた赤くて、リンゴみたい…。 髪の毛は黒いですね、まだ少ないです」

五虎退の言葉に「黒…」「黒髪…」「黒だってよ…」とにわかに容疑者たちがざわつき始める。いち早く容疑者から抜けることができた鶴丸国永と宗三左文字は腕を突き上げて全身で喜びを示した。対して、燭台切光忠や和泉守安定、三日月宗近など髪が暗色のものの顔色は目に見えて悪くなる。

「おい主!目は!目の色は何色だ!」
「これでかなり容疑者が絞れますよ。ふふ楽しみですねぇ…一体誰が、こんな無様で下劣な真似をしたのか今から言い訳が楽しみです」
「変わり身が早すぎるよ、宗三くん…」

主に侍り悪代官宜しくほくそえむ宗三左文字ににっかり青江がいう。鶴丸国永はむりやり赤子の瞼を開けようとしたので後藤藤四郎に「止めろよな!!」と引き剥がされた。

「ちょっと待て大将。なぜ俺っちが容疑者(こっち)側なんだ。可笑しいだろ、俺も短刀だぜ?」
「薬研は信用ならないからなあ…」
「鯰尾は信用なるのか!!?」
「ちょっと薬研! 誤解を招くような言い方は止めて下さいよっみわさん!俺やってないですからね!こういうのもなんか複雑なんですけど俺!童貞!!です!!」
「わたしのエロ本見ておったてるどころか顔真っ赤にして泣きだしたヘタレ鯰尾は黙っておすわりしてろ」
「うわあああああ秘密にしてくださいっていいったのにいいいいいいい」

ぐしゃあ!と畳の上に蹲る鯰尾に「鯰尾…」「童貞…」「ED…」とにわかに容疑者たちがざわつき始める。鶴丸国永は「ちょっと待てみわ、エロ本のとこもう少し詳しく頼む。君のエロ本だって?そんなお宝がこの世にあるのか!?」と違う意味で興奮していたので、見た目こそ相反しているが心の中は鯰尾と同じピュア100%の後藤少年により短刀で思い切り物理KOされた。

「長谷部、容疑者をピックアップして」
「はい。今の所、みわ様が言われた『種別短刀以上、ただし薬研藤四郎は除く』」
「なんでだ大将」
「『申請有無を問わず花街・歌舞伎町への外出経験あり』『生活における風紀の乱れが目立つ』『門限破り』の条件にあてはまる容疑者は…にっかり青江、宗三左文字、加州清光、大和守安定、和泉守兼定、大倶利伽羅、明石国行、燭台切光忠、鶴丸国永、日本号、三日月宗近、____計11振りとなります」
「ちょっとまてぇ!なんで俺が入って国広が入らねぇんだよ! 朝帰りン時は何時も国広が一緒だろ!!」
「それただの自爆だから黙ってた方がいいよ、和泉守ィ」
「自ら腹を切りにいくスタイルや」

声を上げる和泉守に加州清光と明石国行が呆れたように溜め息をついた。

「…確かに、堀川くんも髪の色は黒いし…僕が容疑者に入って堀川くんが入らないのは少し納得がいかないな」
「黙れ女体切光忠、わたしの座椅子を悪く言うな」
「待って、そのかっこよくない名前弄りなに。止めて」
「処女切光忠」
「主のばかあ!!」

光忠がもういやあと大倶利伽羅にしなだれかかる。だが、大倶利伽羅は無言で彼の肩を掴みそっと誰もいない空間へと向かせた。慣れあうつもりはないらしい。そんな相棒の裏切りにやさぐれたのか、ただでさえ狭い居間の一角に正座させれている容疑者グループの間を横切るように光忠がだらんと寝ころんだ。邪魔である。とても邪魔である。アシカが寝転がっているようだ。

「みわっ 俺はちがうぞ! 確かによ、夜遊びは少々嗜んだがっ …〜〜っ俺は違うぞ!」
「おやおや、子どものように泣いて。名高い天下五剣が聞いて呆れますねぇ」
「うちの三日月は政府産で、体は大人頭脳は子どもだから。 でも夜遊び常習犯にかわりなし泣き落としは却下、大人しくおすわり!」

ぴしゃりとみわに叱られ、三日月宗近は綺麗な顔をくしゃりと涙で歪めて「うぅぅ~…!」と畳の上に俯せた。容疑者グループの一角が更に狭くなった。青江が「狭いねぇ…場所の事だよ?」とシャレをきかせるが今ばかりは笑えないと「ちょっと黙っとけ」日本号がいう。

「つーかよぉ、俺たちは人の形をしちゃあいるが付喪神だぜ? 付喪神と人の間にガキができるなんてありえるのかあ」
「都市伝説程度にはきく。…真偽は政府だけが知るんだけど、火のない所に煙はたたないものよ」

みわの言葉は最もだった。_____なんかもう良くわからない事態になってきたぞ。鶴丸国永は「そうかあ…」と適当に合槌をうって休日のお父さん宜しく寝転がった。長谷部は徐にマジックの蓋を外して軍議用のホワイトボードに『・子どもはつくれる』と意味のないメモをとる。その裏では既に大分前から飽きがきている博多藤四郎や信濃藤四郎がキャッキャと落書きを楽しんでいた。

堀川国広はすでにやる気をなくしている男士たちを見て思う。本当にダメだな、この人たち。

「___みわさん、一先ず提案なんですか」
「なんですか堀川助手」
「とりあえず政府に問い合わせてみるのはどうでしょうか? もしかしたら何か手違いがあったのかも」
「どうせその位自分たちで解決しろっていわれるのが落ちよ。こんな粗末事いちいち扱ってくれるほど甘くなーい。政府は便利屋じゃなーい」
「あーはいはい。我儘いわないでください、僕も手伝いますから。一緒に問い合わせに行きましょう」
「めんどくさーい! 平野ぉ赤ちゃん抱っこするのかわって!」
「僕が抱いても泣いちゃったでしょう。僕も御伴しますから、いきましょう!」

閑話休題。

「自分でなんとかしろっていわれた」

戻って来たみわの言葉に、男士たちは絶望した。青江は「#(ハッシュタグ)政府とは」とうっすらと笑っている。どうにも彼は現代の技術に傾倒しすぎている。

「犯人探しは長谷部頼む」
「主、飽きたらすぐに俺に放り投げるの止めてくれませんか」
「平野と堀川、それにキュア・ナマズーオはわたしと一緒にこの子のお世話係するよ」
「俺が…プリキュア…?」

画して、この本丸に小さな居候が誕生したのである。

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