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ボスLOVEなモブ駅員に説教される▽彼女


「お前、まさかボスの前でもそないな可愛げない態度でおるんとちゃうやろな」

ぴっと向けられた藍色の箸、その先についている鮭フレークが妙に目についた。

「クラウドさん、人に箸を向けるのは貴方の郷土では不作法にあたるのでは?」

自分のお弁当を突きながらジャッキーが横やりを入れた。彼のお弁当箱は真っ黒の漆塗りで拵えられた高級弁当箱、一見心躍るが騙されるなかれ。中身はオール冷凍食品だ。

「あ、それにポニータに蹴られてうんたらとも言うさ〜」

次いでトトメスが茶化す様に言った。振り上げた紙コップから飛んだ水飛沫が木漏れ日を受けてきらきらと反射する。からからと笑うトトメスにジャッキーが呆れた様に溜息を着いて「人の恋路を邪魔する奴はポニータに蹴られて死んじまえ」と訂正を入れた、それが面白くて私はくすりと笑って箸を弄った。

「恋路ねえ…」
「ミシャさん目が死んでますよ」
「あーこりゃ駄目さ。 クラウド、ミシャに恋説法は言うだけ無駄さ」

「だが俺は止めん!!」

「鮭フレーク飛んでますよ」まったくジャッキーの言う通りだ。何をクラウドさんは熱くなってるのか。

「ミシャ、今から俺ン訊くことに正直に答えや」
「嫌です、面倒です」
「答えるなら弁当やるぞ、食いかけやけど」
「頂きます」
「自分ほんま食い意地はっとんな」
「クラウドさんのお弁当マジ美味いので。てかくれるんでしょ?手離してください」
「質問に答えろよ」
「しつこいですね、答えれば良いでしょう。答えれば」

そう言ってため息を着きながら奪ったクラウド弁当(安っぽいプラスチック弁当箱だが中身はオール手作り。しかもばか上手い)の上で箸を悩ませていると「それやああ!」と大声で指さされた。

「!? な、なんですかっ」
「自分ボスの前でもそないな態度でおるんとちゃうやろな?」
「ボス? ああ、ノボリさんですか。ええこんな感じですよ、部下なんで。私」
「ちゃうわおもろないボケかますなドシローが! ボスはボスでも白いボス、自分の彼氏のクダリさんの方や!」

「ジャッキーさん、果てしなくこの人ウザいんですけど…」
「食欲に負けてお弁当を受け取ってしまった時点でミシャさんに責があります。自業自得です」
「ジャッキーってば容赦ないさ…」

どうやら二人は助けてくれる気は無いらしく平和に昼食タイムを満喫中だ。くそっ白状者めえと毒づきながら「はよ答え!弁当取り上げンぞ!」と凄んでるクラウドさんをちらりと見る。…こうなったら適当にあしらおう。

「あーそうです! こんな感じですよ、悪いですか?」

腹を切ってそう言えばクラウドさんががくんと口を開けて固まった。

私こと、イッシュ旅客鉄道職員ミシャは当社では…いや、おそらくこのイッシュで切磋琢磨しているポケモントレーナーなら知らない人はいない有名人。バトルサブウェイのダブルの支配人。白いボスことクダリさんとお付き合いさせて貰っている。

「おまっおまっ…! クダリさんに失礼やと思わんのかこのアバズレ!!!」
「アバズレは言い過ぎですよクラウドさん。相手がミシャさんじゃなきゃ訴えられても仕方ないレベルです」
「まあクラウドはボス大好きだから仕方ないさ」
「と言うかミシャさんってボスの前でもそんな感じなんですね。予想では普段はツンツン、ボスの前ではデレデレだったのでちょっとショックだったりします。悪く言えば幻滅」
「待て。なんでそこで幻滅されねばならん」
「仕方ないさジャッキー。だって、告白したのも先に好きになったのもボスからさ」
「せやかてOKしたんや! 自分クダリさんのこと好きなんやろ? アア˝ァ!?」
「ミシャさん嘘でも『好きです』って言った方が良いですよ、じゃないとクラウドさんに殺されます」
「好きです」
「まんまカンペ通りやないか!」

キシャー!!!と頭を掻きむしるクラウドにミシャは更に精神的距離を置いた。本当になんでこの人熱くなってるんだ。

「よっしゃ解った。ミシャ」
「…?」
「好きやないなら今すぐクダリさんとこ言って『ごめんなさい別れて下さい』って言うて来い。傷は浅い方がええねん」

「クラウドめっちゃ目ぇキラキラしてごぶふあ」笑うトトメスにジャッキーの肘鉄が入った。

「……は?」

ひくりと、クラウドの言葉に口角を引くつかせた後、ミシャはパンと箸を弁当の上に荒々しく乗せた。

「人にとやかく言われる筋合いありません。てか、別にそれで互いに満足してるんだから良いでしょう。きっとこの距離が私も彼も心地よいんです」
「それは悪魔で自分の考えやろ。ええかミシャ、男は皆オオカミや。好きな女とおって疾しいこと考えない男はおらん!おるとしたらそいつは男やない!」
「凄い差別ですねクラウドさん、じゃあ僕は男じゃないかもしれないです」
「ジャッキーちょっと黙っとれ! 一分一秒でも長く触りたいし抱きしめたいんや!」
「クラウド今年で幾つさ?」

A.32歳独身

「せやのにお前の態度と来たらどうや! 何時もぼーっとして恋愛には無関心、職場では恋人を避けるばかりが二人っきりでも不細工な顔で冷たい態度! …お前ボスが可愛そうやと思わんのかこの冷血漢!!!」

A.32歳独身※心は永遠の13歳

「なんか…その…すみませんクラウドさん、キモイです」
「大丈夫ですミシャさんは正常ですよ。僕から見てもキモイですから」
「クラウド早く結婚するさ」
「うっさいわトトメス! 自分も三十路独身やろ!!」
「まだ三十路じゃないさ! 後一年!後一年!」

このまま話脱線してくれないかな…

「話を戻すでミシャ、」
「チッ」

三十路独身はしつこかった。

「自分少しでもクダリさんを好きだという気持ちがあるならもうちょい素直になり。もっとこう、女らしく! そう女らしくや…! もっと髪は緩やかに巻いたり化粧もしてその目むそうな顔を持ち前の若さで輝かせるんや! 言葉づかいももっとかわいらしゅうして女っぽくな! そうすればクダリさんも喜ぶはずねん! 女の子らしく!」

「いま何回女らしくって言いました?」
「4回です」
「クラウド強調しすぎさ」

「ともかく!! クダリさんは悪ない!悪いんはお前や!!ミシャ!」

コイツ絶対この台詞を言いたい為だけにこの会話成立させやがったな。

「…独身の人が煩いですね…別にあなたには関係ないでしょ。そりゃあ、私はこんなガサツで可愛くもないですよ。でもクダリさんがそれでも良いって言ってるから仕方ないでしょう! 恋愛はなんですよ!」

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